余所者-よそもの-【 2 】



カエデと出会ってから、数日が過ぎた。

あれ以来、特に変わったことはない。

それなのに、時々。
あの人の笑顔が、不意に頭をよぎる――



「……ナコ」


遠くの方で誰かが私を呼ぶ声がする。
夢かな。

だって私まだ寝てるし。


「――カナコ!!」

「……ぐえ!!」


お腹への突然の衝撃で、強制終了される睡眠。


「え?」

私は何度かパチパチと瞬きをした。


「おはよ!」

首を傾げて微笑む、リンコ。


寝起き眼をごしごしと擦る。

間違いない、リンコだ。


「何、してるんですか」


リンコはAnBarの二階で眠る私の、この腹の上にどっかりと腰を落としていた。


なんで私の部屋にいるの。
なんで私の上にいるの。


ぼうっと半目のまま睨みつける。

けれど、リンコはそんなことお構いなしに、ぐん、とその笑顔を近づけた。


「ショッピング行くわよ!」


そう宣言したリンコは、寝ぼける私もそっちのけ。

私の髪を部屋にあった櫛で乱暴に梳かし、スマホだけを握らせると。

二階から一階へ。
一階から外へ。

押し出すようにして私を連れ出した。


表に待たせてあったタクシーへ滑り込むように乗り込み、目的地を伝える。
タクシーは容赦なく走り出した。