余所者-よそもの-【 2 】



ユキのマンションに戻り、黙々と仕事をしているユキを尻目に、キッチンに入った。

食材をキッチン台に並べて、順番に細かく切っていく。
食材の準備が出来れば、新品のフライパンに火をかけた。

フライパンにバターを入れると、じわじわ溶けるバターの濃厚な香りがキッチンに広がる。


――『カナ、まだ?腹減った』
――『もうすぐできるよ』


気がつけば、バターの隅が黒く焦げ始めていた。

……しまった。早く食材を入れなきゃ。


焦って手を動かした瞬間、フライパンの取っ手に腕が勢いよく当たった。

コンロの上で大きく動いた、熱々のフライパン。


くるっと回って、コンロの台座から外れると、そのまま足元へと滑り落ちてきた。

――ガシャン、という物音と共に、「きゃっ、」と、思わず悲鳴を上げた。



「どうした?」

奥から弾かれたようにユキがやってきて、こちらを覗き込んだ。


「ユキさん、ごめんなさい……床が」


慌てて持ち上げたフライパン。
十分に熱された鉄が直撃した床には、黒々とした焦げ跡がついてしまっていた。


「おい」

「――…っ」

「そんなことを言ってる場合か!」


フライパンを持った手とは逆の手で抑える、左足首。

フライパンが当たり、さらには溶けた熱いバターがそのまま肌にかかってしまっていた。


ユキは私の状態に気が付くと、言葉よりも早く私を横抱きにして、浴室に駆け込んだ。