「今日はここで仕事ですか?」
「仕事っていうか、ちょっと金を転がしてるだけ」
よくわかんない、と思って、後ろからちらっとパソコン画面を覗いてみた。
緑と赤のグラフが忙しなく点滅していて、見ているだけで目が回りそう。
「ユキさんの仕事って、AnBarとかのお店経営だけじゃないんですか?」
「まぁ。あとは投資とかいろいろ」
ずっと不思議だった。
なんでこの人は湯水のごとくお金を使えるのか。
尽きることのない資金源が、きっと他にあるに違いないと思っていた。
投資かぁ。
私にはきっと一生、無縁な世界だ。
ユキはパソコン画面から目を離さず、とても集中しているようだった。
邪魔しちゃ悪いかな。
そう思った私は、そっとキッチンへ行き、小さなお皿にチョコを盛り付けて戻った。
ローテーブルにチョコを置くと、パソコンを操作していたユキの手はピタリと止まる。
「何コレ」
「なんとなく、チョコはユキさんの集中アイテムなのかなと思って」
ユキが開店前のAnBarで仕事をしているとき。
何も話さず集中している日は、サンコンにチョコを頼んでいた。
まさかここで仕事をすることがあるとは思っていなかったけれど、あれば食べることもあるかも、と思って買っておいた。
ユキは「お前って気が利くよね」と少し呆れたように、けれど嬉しそうに言いながらチョコを一つ口に放り込んだ。
「今日はずっとここで仕事ですか?」
「その予定」
「私って、今日ここに居てもいいんですか?」
「なんで?」
「邪魔にならないかなって」
「邪魔にならないように居たらいいんじゃない?」
「………」
まぁ、そうなんですけど。
掃除するから、どうしても物音は立ててしまうし。

