「お疲れ様でした」
「お疲れ様です」
私の働くclub AnBar.は、今日も営業を終えた。
退勤したサンコンを見送り、照明を落としていく。
無音の中、フロアをブルーに照らしていたライトを切ると、なんだか無性に寂しい気持ちになる。
「………」
お風呂に入ってさっさと眠ってしまおう。
銭湯の用意をバッグに詰め込み、AnBarを出る。
入口の鍵をかけて振り向くと、見知った人物が視界に入ってきた。
「乙っす」
細い路地の先で控えめに声を上げ、そのくせ、ブンブンと腕を振って合図を送ってくる男。
袖口や襟元から覗く刺青だらけの素肌と、狐みたいな細い目。
前にコンビニで出くわした……あの刺青男だ。
目が合ってすぐに、男はこちらへ駆け寄ってきた。
「……なんでここに?」
「お迎えに」
お迎え?
「なんの?」


