余所者-よそもの-【 2 】



「さ、入ってください」

「誰もいないよ?」

「中にいます」

「中?」

中なら、見てるけど。


一目で見渡せるほどの、狭い空間。

木製の床を一段上がった先には、小さなバーカウンター。
数脚の椅子が並び、その奥には酒瓶がびっしりと並んでいる。

それだけ。


「どうぞ」

導かれるままに足を踏み入れると、背後でガチャリ、と扉が閉まった。

その音が、やけに重たく感じた。

少し怖くなって「野間くん……?」と小さく声をかける。


「こっちっす」

ガコ、ガコ、と木箱を踏み鳴らすような足音を響かせながら、野間はカウンターの内側を進んでいく。

やがて突き当たりまで行くと、暖簾(ノレン)を片手で開き、私を待った。


「ここっす。この先にいらっしゃるんで」

「………」

「じゃあ、僕はここで」


「ちょ、ちょっと待って」

「マジで勘弁してください。僕は野暮ではないので」


心の準備が出来てない。


今さら慌てだす私もそっちのけ。

野間はスタスタと来た道を引き返すと、扉の先に消えて、

──ガチャリ、と外から鍵をかけた。