私は目の前にある扉をじっと見つめていた。
暖簾がかけられた先にある、たった一つの扉。
この先に、シドが居る。
そう思うと、この扉を開ける勇気がなかなか湧いてこない。
その先に、以前シドと過ごしたあの空間が広がっていると想像すれば、どうしたって足は竦んでしまう。
入浴セットの入ったバッグを胸の前に抱えたまま、動けずにいた。
だから、それは完全に不意打ちだった。
ギ、と独りでに開いた扉が、――ドゴン、と私の身体をなぎ倒す。
「いつになったら入ってくんだ」
「シド……」
見上げれば、きっとお風呂上がりなんだろう。
いつも綺麗にセットされているシドの髪は柔らかに流れていて、いつもの彼よりも少し優しげに見える。
「なんで私がここに居ること、」
「丸聞こえなんだよ。ったく、どんくせぇな」
尻もちをついたまま固まる私をからかうように笑うと、手を差し出してくる。
「ありがとう……」
まともに目を見れないまま。
その手を借りて立ち上がると、中へと入っていくシドの後ろをついて歩いた。
そこは、想像していた通りの空間だった。
この間シドと過ごした、部屋。
ベッドが一台と、その脇に小さなテーブルがあるだけの、あまりにも簡素な部屋。

