余所者-よそもの-【 2 】



私は目の前にある扉をじっと見つめていた。
暖簾がかけられた先にある、たった一つの扉。

この先に、シドが居る。

そう思うと、この扉を開ける勇気がなかなか湧いてこない。
その先に、以前シドと過ごしたあの空間が広がっていると想像すれば、どうしたって足は竦んでしまう。

入浴セットの入ったバッグを胸の前に抱えたまま、動けずにいた。

だから、それは完全に不意打ちだった。


ギ、と独りでに開いた扉が、――ドゴン、と私の身体をなぎ倒す。


「いつになったら入ってくんだ」

「シド……」


見上げれば、きっとお風呂上がりなんだろう。
いつも綺麗にセットされているシドの髪は柔らかに流れていて、いつもの彼よりも少し優しげに見える。


「なんで私がここに居ること、」

「丸聞こえなんだよ。ったく、どんくせぇな」

尻もちをついたまま固まる私をからかうように笑うと、手を差し出してくる。


「ありがとう……」

まともに目を見れないまま。
その手を借りて立ち上がると、中へと入っていくシドの後ろをついて歩いた。

そこは、想像していた通りの空間だった。

この間シドと過ごした、部屋。
ベッドが一台と、その脇に小さなテーブルがあるだけの、あまりにも簡素な部屋。