「……んでも、多夜さん」
「………」
「目的地は僕と同じっすよね?」
「Re:bidoにいる」
「ですよね」
そこで多夜の手がパッと離れた。
ドサリ、と地面に尻もちをつく。
「帰る。持っていけ」
「うっす。お疲れっした」
多夜は、野間の綺麗なお辞儀を背中に受け、無言で去っていく。
腰を折ったままの野間が、地面にへたり込む私を見て「ぷっ」と口元を押さえた。
「なに……笑ってるの」
「いや、ビビリすぎでしょ。知らない男に襲われそうになってたときよりも、すげー顔してたっすよ」
「怖いんだもん。多夜さん……」
野間は顔を上げて帽子をかぶり直すと、苦笑いを浮かべながら私に手を差し伸べた。
「あんま喋んないっすからね、あの人」
「うん……」
「慣れれば平気っすよ。多夜さんの頭の中は案外単純です」
「単純?」
「あの人を突き動かすのは紫藤さんだけ」
なにそれ。
多夜の行動の全部が、シドのためってこと?
「………」
だとすれば。
多夜のこれまでの言動は、ますます意味がわからない。


