「野間」
地べたに伸びた男を見下ろしながら、多夜が呟いた。
呼ばれた野間は、すぐさま「はい」と返事をする。
「寄こせ」
「何をっすか?」
「女」
まるでボール遊びでもするように、足先で男の頭を転がす。
多夜の声には、相変わらず感情というものが感じられない。
「ええっと……構わないっすけど」
野間は私を見た。
多夜の『寄こせ』と『女』が、もし私を指しているのだとすれば。
──ムリムリムリムリ。
声には出さず、顔いっぱいで拒否した。
野間は困ったように眉を下げ、多夜へと向き直った。
「来い、女」
「………」
イヤだ……。
本当に嫌なんだけど。
顔を逸らし続けていると、突然手首を掴まれ、ぐんっと引っ張られた。
足はその場を動こうとせず、身体だけがぐらりと傾く。
不格好に、多夜の手元でぶら下がった。


