それから私たちはシトウの街の奥深くを進んだ。
大通りから枝分かれした路地に入って、またその更に路地裏に入って。
と、まぁ迷路のような道を突き進んでいく。
小さな居酒屋と、バイク屋の間。
人二人がすれ違うのがやっとの店舗の隙間に、人目を遮るようにして木製の扉が設けられていた。
野間は左右を素早く確認すると、木の割れ目を押し開き、奥へと進んでいった。
こんな場所、誰が道と認識するだろうか。
それでも抵抗なくついて歩いたのは、断片的な記憶ではあるけれど、一度通ったことがあるからだ。
ブウン、と音を鳴らす室外機の間をすり抜けて、奥に行けば小さな建物に辿り着く。
こじんまりとした、小さな店構え。
ドアには『close』と書かれた、小さなプラスチックプレートが下げられている。
店舗の看板も無ければ、客を引き寄せる派手な電飾だってない。
営業しているかすらわからないくらい、地味で存在感のないお店だった。
ここがリビドー、と呼ばれる場所。
シトウの中の限られた人間しか出入りできないっていう、特別な……?
「なんか、地味」
「地味でいいんですよ、むしろ目についちゃダメなんで。敵が多いっすからね。まぁ、味方のが多いっすけど」
野間はそう言うと、キイ、とドアを開ける。
するとリン、と頭上から鈴が鳴った。

