野間は腰を折った姿勢のまま、地面にへたり込む私を覗き込んで、ぷっと口を抑えた。
「なに笑ってるの」
「いや、ビビリすぎでしょ。知らない男に襲われてるときよりも、すげー顔してたっすよ」
「怖いんだもん。多夜さん」
ちらりと前方を確認し、多夜の背中が十分に小さくなったことを確認してから、やっと頭を上げた野間。
乱れた髪を掻いて帽子を被り直せば、苦笑しながら私に手を差し伸べた。
「あんま喋んないっすからね、あの人」
「何を考えてるかわからなくて怖いんだよね」
「慣れれば平気っすよ。案外単純だし、あの人」
「単純?」
「あの人を突き動かすのは紫藤さんだけです。僕はこの街において起こすあの人の行動は、全て紫藤さんの為だと解釈していますから」
「………」
私は、こちらに差し出された腕をじっと凝視していた。
野間の右腕にグルグルと巻きついた、黒い龍の刺青。
向けられた腕の内側をよく見れば、その龍は尾っぽを咥えた蛇を丸飲みにしている。
「これって、龍なの?蛇なの?」
「龍っすよ。無限が欲しくてウロボロスになりたかった蛇を、喰らった龍です」
「すごい絵……」
龍の口から飛び出す蛇は、苦しそうに千切れた尾っぽを飲み込んでいた。
その蛇を丸飲みしている龍の顔つきは猛々しく、今にも動き出しそうなくらい迫力のある絵だ。
「……って、あの。そろそろ手、掴んでもらっていいですか」
滑らかな肌に立体的に浮かぶ刺青が不思議で、そろそろと指先でなぞってしまっていた。
「くすぐったいですし……なんか傍から見たら誤解されそうなんで」
「ごめんっ」
結局差し出された手を掴まず、スタッと自力で立ち上がった私に野間は笑った。

