「野間」
地べたにノびている男の顔面を、靴先で転がしながら多夜が呟く。
呼ばれた野間は「はい!」とキレのいい返事をした。
「寄こせ」
「何をっすか?」
「女」
まるでボール遊びでもしているかのように足元を転がす多夜の言葉には、相変わらず感情というものが見えない。
「ええっと……構わないっすけど」
野間はちらりと私を見た。
多夜の『寄こせ』と『女』が私を指しているのだとすれば。
――ムリムリムリムリ!!
という意志を目で必死になって伝える。
野間は同情するかのような困った顔を返してから、多夜へと向き直った。
「おい。立て。女」
「………」
ヤだ。
本当に嫌なんだけど。
「んでも多夜さん。目的地は僕と同じですよね?」
「……Re:bidoに居る」
「ですよね」
「……帰る。持っていけ」
「うっす。おつかれっした」
野間の綺麗なお辞儀を背に受けながら、多夜は無言でこの場を去っていく。

