余所者-よそもの-【 2 】


黒装束に身を包み、地下を出た。

さわさわと、爽やかな風が肌を這う。


懐かしい。
ずいぶん長い間、眠ってしまっていたようだ。

フードを目深に被り、日差しを避けて歩いた。

湿っぽくて陰険で、命を削る街。
それが僕の街。


闇に紛れ、帰り着いた場所。

ドアノブの外れた扉、荒れた部屋。
お気に入りのデスクもチェアも、壊されていた。

床に転がった、大切なスマホをそっと拾い上げる。


誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ。

僕の領域を穢したヤツは。


発信履歴に残された、見知らぬ電話番号。
迷わず発信ボタンを押した。

電話口に出たのは女。
鈴を転がすような声で、一方的に喋り続けた。

「………」

話す言葉も、殺意も、忘れた。

冷たい頬に手を当てる。

──僕の両目からは、とめどなく涙が溢れていた。


なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ。

空っぽのこの器に、どくどくと命が流れ込んでくる。


スマホの近くに転がっていた、ピンク色のヘアクリップ。
ボサボサとうっとうしい白い髪に留めた。

……決めた。
出会おう、この人に。

そう難しいことじゃない。
だってこの街において、この僕が願うのだから。


さぁさぁ、始めよう。
この終わりの街で。