高校の教室。
そこは私、柚木羽衣にとって、家と同じくらい息の詰まる場所だった。
始業前の教室に、下俗な笑い声が響く。私の机の周りには、クラスの主犯格である女子グループが群がっていた。
私は椅子に座ったまま、小さく身を縮めている。本当に先生が来る前のこの時間が苦痛だ。
「ねえねえ、柚木さんさぁ。知ってる? 今ネットで話題の『世界七不思議』のまとめサイト」
巻き髪のギリ校則範囲内女子が、スマホの画面を初の目の前に突きつけてきた。
「ギリ校則範囲内女子」は私の中でつけてるあだ名。長いから「ギリ校範女子」って言ってるんだけどね。
そこには『世界を滅ぼす7つの大災厄』という大層なタイトルが躍っている。
ハッ、またこんな。いつものこと。
「これの5番目さ、『姿を消した銀色の人狼、街に災いをもたらす』だって! まじ卍ウケるんだけど。これ絶対、柚木さんのことでしょ?」
まじ卍て、いつの言葉使ってんの。私は乾いた笑いを漏らしながら、
「え……っ、私は、そんな……」
か弱いフリをした。怒ったらあの時みたいにまずいことになる。最悪退学か、停学か、親が呼び出されるか。
それはあの時よりもまずい。
一応薬飲んでるんだけどね。なんで銀狼疑惑をかけられているんだ。髪も普通の黒髪だし、手足だって完璧な人間。
どこにも銀狼だって疑惑をかけられる証拠がない。
多分、いじめの口実で、それがたまたま私の正体と合ってるだけなんだろうけど。
「何、その怯えた顔! 図星だからって黙り込まないでよ」
おいおいおい。とんだ勘違いはやめな、「ギリ校範女子」の取り巻き。
取り巻きは、私の机を激しく叩いた。
ガタッと大きな音がして、周囲の生徒が一瞬こちらを見るが、すぐに見て見ぬふりをして目をそらした。
「世界七不思議に的中しそうなんて、マジで不気味。あんたが教室にいるだけで、なんか呪われそうなんだけど?」
おー呪われてくださいよ。私は睨みつけた。
「そうそう! ほら、なんか不吉なオーラ出してみなよ。世界の三大能力者サマなんだっけ?
ほら、なんか魔法とか使ってみせてよ、キャハハ!」
最悪・最低・最劣。すごい、3Sが並んだ!
そんな喜びも束の間、私の脳内では怒りの赤い液体が注がれていた。
私の胸の奥で、ドロリとした熱い塊が爆発した。家でも、学校でも、ただ普通に生きたいだけなのに。
何も悪いことをしていないのに、どうしてここまで踏みにじられなければいけないのか。
理不尽な悪意への怒りが、私の脳の許容量を超えた。
――ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!
「え……? なに?」机を叩いていた女子の手が止まる。
突然、足元から不気味な地鳴りが響き渡った。
震度3、4はあるかのような激しい地響きが学校全体を揺らしていた。
「キャッ!? 地震!? やばいって!!」
クラス中がパニックになり、机の下に隠れようとする。
だが、異変はそれだけでは終わらなかった。
ザザザザザザザザザザザッ!!!!
窓の外から、鼓膜を圧迫するような凄まじい「音」がなだれ込んできた。
校庭の木々、裏山の森、街路樹、視界に入る全ての木々が、まるで意思を持ったかのように激しくざわめき、狂ったように揺れている。
風なんて吹いていない。
ただ、世界が『銀狼』の怒りに共鳴し、恐怖に慄いている。
ハッ!!!え、私、今、やばい!!!!
止まって、止まって、止まってぇぇぇ.....
私、そこまで、怒ってた!?
もしここで暴走したら薬の効果が切れて世界にやばい天変地異が起こるから、止まってぇぇ!!!
フゥ、ホッ。とまっ、た。
「……すいません。私、体調が悪いので、保健室に行きます」
私はできるだけ威圧感のある声でそう告げると、ガタッと椅子を引いて立ち上がった。
そこは私、柚木羽衣にとって、家と同じくらい息の詰まる場所だった。
始業前の教室に、下俗な笑い声が響く。私の机の周りには、クラスの主犯格である女子グループが群がっていた。
私は椅子に座ったまま、小さく身を縮めている。本当に先生が来る前のこの時間が苦痛だ。
「ねえねえ、柚木さんさぁ。知ってる? 今ネットで話題の『世界七不思議』のまとめサイト」
巻き髪のギリ校則範囲内女子が、スマホの画面を初の目の前に突きつけてきた。
「ギリ校則範囲内女子」は私の中でつけてるあだ名。長いから「ギリ校範女子」って言ってるんだけどね。
そこには『世界を滅ぼす7つの大災厄』という大層なタイトルが躍っている。
ハッ、またこんな。いつものこと。
「これの5番目さ、『姿を消した銀色の人狼、街に災いをもたらす』だって! まじ卍ウケるんだけど。これ絶対、柚木さんのことでしょ?」
まじ卍て、いつの言葉使ってんの。私は乾いた笑いを漏らしながら、
「え……っ、私は、そんな……」
か弱いフリをした。怒ったらあの時みたいにまずいことになる。最悪退学か、停学か、親が呼び出されるか。
それはあの時よりもまずい。
一応薬飲んでるんだけどね。なんで銀狼疑惑をかけられているんだ。髪も普通の黒髪だし、手足だって完璧な人間。
どこにも銀狼だって疑惑をかけられる証拠がない。
多分、いじめの口実で、それがたまたま私の正体と合ってるだけなんだろうけど。
「何、その怯えた顔! 図星だからって黙り込まないでよ」
おいおいおい。とんだ勘違いはやめな、「ギリ校範女子」の取り巻き。
取り巻きは、私の机を激しく叩いた。
ガタッと大きな音がして、周囲の生徒が一瞬こちらを見るが、すぐに見て見ぬふりをして目をそらした。
「世界七不思議に的中しそうなんて、マジで不気味。あんたが教室にいるだけで、なんか呪われそうなんだけど?」
おー呪われてくださいよ。私は睨みつけた。
「そうそう! ほら、なんか不吉なオーラ出してみなよ。世界の三大能力者サマなんだっけ?
ほら、なんか魔法とか使ってみせてよ、キャハハ!」
最悪・最低・最劣。すごい、3Sが並んだ!
そんな喜びも束の間、私の脳内では怒りの赤い液体が注がれていた。
私の胸の奥で、ドロリとした熱い塊が爆発した。家でも、学校でも、ただ普通に生きたいだけなのに。
何も悪いことをしていないのに、どうしてここまで踏みにじられなければいけないのか。
理不尽な悪意への怒りが、私の脳の許容量を超えた。
――ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!
「え……? なに?」机を叩いていた女子の手が止まる。
突然、足元から不気味な地鳴りが響き渡った。
震度3、4はあるかのような激しい地響きが学校全体を揺らしていた。
「キャッ!? 地震!? やばいって!!」
クラス中がパニックになり、机の下に隠れようとする。
だが、異変はそれだけでは終わらなかった。
ザザザザザザザザザザザッ!!!!
窓の外から、鼓膜を圧迫するような凄まじい「音」がなだれ込んできた。
校庭の木々、裏山の森、街路樹、視界に入る全ての木々が、まるで意思を持ったかのように激しくざわめき、狂ったように揺れている。
風なんて吹いていない。
ただ、世界が『銀狼』の怒りに共鳴し、恐怖に慄いている。
ハッ!!!え、私、今、やばい!!!!
止まって、止まって、止まってぇぇぇ.....
私、そこまで、怒ってた!?
もしここで暴走したら薬の効果が切れて世界にやばい天変地異が起こるから、止まってぇぇ!!!
フゥ、ホッ。とまっ、た。
「……すいません。私、体調が悪いので、保健室に行きます」
私はできるだけ威圧感のある声でそう告げると、ガタッと椅子を引いて立ち上がった。


