WANTED / Myth.

おとぎ話の世界は、いつだって残酷だ。



人間に騙されて泡になって消えた人魚。


人間の身勝手な都合で、地上へ堕とされ羽を奪われた天使。


そして、月の夜に狂い、人間たちに狩り尽くされた銀色の狼。




それらは決して、作られた絵本の中の絵空事なんかじゃない。

数百年、数千年の昔から、数々の能力者の中から世界の裏側で必ず「三人だけ」現れるという、神の欠片を持った孤独な超常の能力者たち。

世界を支配する大天災の力を持って生まれてしまった。世間から畏怖と嫌悪を込めて、こう呼ばれている。



――『ミソロジア』と。



だけど、高校1年生の私、柚木羽衣(ゆずきうい)にとって、その力はただの呪いでしかなかった。



「……よし。これで、ただの『無能の羽衣』」



毎朝、真っ白な薬を冷水で流し込む。

喉を通る鋭い痛みと一緒に、頭の上の銀色の獣耳が縮み、スカートの後ろから伸びるふさふさとした立派な尻尾が消えていく。


家では能力者だからと実の家族に差別され、実の母親には本名すら呼ばれず「銀狼」と化け物扱いされる日々。


学校に行けば、ネットの『世界七不思議』のオカルトまとめサイトに的中しそうだと、いじめっ子たちに気味悪がられる毎日。

あんまり気にしてないんだけどね。





手足は普通の女の子のままだからこそ、普通の女子高生として、普通に暮らしたかった。




ただ、それだけだったのに。