即答だった。正直、本当に興味がない。
イケメンだろうが人気俳優だろうが、どうでもいい。
仕事が終われば他人になる人間に興味を持つ理由なんて、私にはなかった。
すると翠が吹き出した。
「東雲朔が聞いたら泣くぞ」
「知らない」
「全国のファンも泣く」
「もっと知らない」
私がそう言うと、翠は腹を抱えて笑い始めた。
失礼なやつ。
私はソファの背もたれへ体を預け、そのまま天井を見上げた。
「でも」
翠はそんな私を見ながら言う。
「ほんとに少しは警戒しとけよ」
「なんで?」
「深夜によく一人でいるとか、女優とに当たり強いとか、変な噂多いんだよ」
「ふーん」
「あー、あと撮影現場で全然笑わないとか」
その言葉に、少しだけ視線を向ける。
“笑わない”
なぜだろう。
本当に少しだけ、ほんの少しだけ引っかかった。
「変な人なんだね」
「たぶんな」
翠は肩をすくめる。
「まぁ、琴とは相性最悪そうだけど」
それは私も思う。
問題児俳優。死んでも関わりたくないタイプだ。
まぁでもどうせ仕事だけの関係だし。
乗り切るしかないかと小さいため息を吐きながら、私はテーブルの上に置かれた資料へ手を伸ばした。
何気なく一枚目を開いた。
そこには黒髪の男が写っていた。
鋭い目に、無愛想そうな表情。
写真なのに、人を寄せ付けない空気がある。
芸能人らしい愛想の良さなんてどこにもない。
そんな写真を数秒だけ見つめる。そして。
「感じ悪そう」
ぽつりと呟いた。
「お前が言う?」
翠のツッコミが飛んできた。
失礼な。私はこんなに愛想がいいのに。
少なくとも仕事中は。
