天使は今日も嘘をつく〜愛されアイドルの隠しごと〜


男がこちらを見る。

私はすっと視線を逸らした。


本当はそれだけじゃない。
あの言葉が、私に言われているみたいだったから。

他人事だと、どうしても思えなかった。


「しょうもない人の言うこと、気にしなくていいと思います」


ぽつりと言う。


「そういう人って自分が正しいって思い込んで、自分の価値観押し付けてるだけだから」


そう言いながらも、自分に言い聞かせてるみたいだった。

男は何も言わず、ただじっと私を見ている。
……居心地悪い。


「……なんですか」

「いや」


男は少しだけ目を細めた。


「お前、俺が怖くないのか?」


不意にそう聞いた。


私は瞬きをする。

怖い?どうして?


「なんでそんなこと聞くんですか?」

「みんな、そうだから」


男は笑わない。冗談でもなさそうだった。


「近寄るなだの、怖いだの、化け物だの……よく言われるから」


少しだけ寂しそうな声だった。
だからだろうか。私はすぐ首を横に振った。


「怖くないですよ」


男が目を瞬く。


「この前だって絆創膏くれたし」

「……」

「悪い人には見えません」


沈黙が落ちた。

男は何も言わず、ただ少しだけ目を伏せた。
その横顔が、なぜだか少しだけ苦しそうに見えて。


「……変なやつ」


しばらくして男はそう呟いた。


「あなたに言われたくないんですけど」


感じ悪くて、変な人なのに。
なぜだろう。少しだけ笑ってしまった。