星降る夜に、あの日のキスをもう一度


 どこまでも優しい彼の眼差しに、アンジェラは何も考えないまま言葉がこぼれた。もし叶うなら……

「最期は貴方の腕の中で眠りたい……」

 囁きにしかならなかった願いに、コンラッドが目を見開く。
 その目の奥に見える熱に、誤解を招く発言だったかとも思ったけれど、誤解のままでもいいような気がした。

「結婚しよう、アンジェラ。今は貴女に捧げられる花も何もないけれど、貴女を止めることができないなら、せめて私に待つ権利をくれないか? もう、貴女が突然消えるのは嫌なんだ。帰ると約束してくれるなら、一生だって待つ。どうか私の妻になってほしい」
「コンラッド……」

 求婚の捧げ物も花もないけれど、これは正式な求婚だ。
 彼から求婚されたら断ろうと思っていた。断れると思っていた。
 でも今のアンジェラは、体中に震えが走るほどの喜びで呼吸もできない。

 もしも今世で最後なら、この奇妙な生がすべて終わるなら――

(たとえ彼に背を向けられる日が来るとしても、わたくしは後悔したくない)

「――はい。コンラッド。わたくしも貴方のところに帰りたい」

 それはどこまでも純粋な気持ちで、少しだけためらってからアンジェラは「背の君」と夫を表す古い言葉でコンラッドを呼んだ。

「アンジェラ」

 頬を両手で挟まれ、焼かれそうなほど熱のこもった目で見つめられる。そのまま頬と耳の下にキスを受け、「部屋に……」という囁きに黙って頷いた。
 差し出された彼の手を取り、アンジェラはそっと身を寄せる。ここがもっとも安全で、かつ自分のいるべき場所だと感じられた。
 それでも――

「お願い。唇へのキスだけは、なさらないで」

 それだけは、まだ、できない――。