わたしは悪役令嬢になった転生一度目、婚約破棄され、処断された。転生二度目、浮気され心も体も壊れた。相手側は自分が間違っていたと後で思う。でも間に合わない。転生三度目は、素敵な王太子殿下に溺愛されます。

 そして、わたしたちは、わが屋敷を出発してから二日後の夕方、ルクシブルテール王国の王都にある王宮に入った。

 わたしと側近・護衛は、それぞれ部屋を割り当てられた。

 しかし、少しの間休んだ後、国王陛下と王妃殿下の謁見が待っていた。

 わたしは、その部屋で、持ってきた中で一番いいドレスに着替えた。

 迎えに来たオクタヴィノール殿下は、

 「リディテーヌさん、あなたはいつもにも増して、美しい」

 とうっとりとした表情でわたしを褒めてくれた。

 わたしはうれしかった。

 わたしとすれば。その場で抱きしめてほしかった。

 しかし、さすがにそれは無理だったので、残念ながら断念せざるをえなかった。

 そして、オクタヴィノール殿下と一緒に、国王陛下と王妃殿下の待つ謁見の間に向かった。

 いよいよオクタヴィノール殿下との婚約を認めてもらえるかどうか、決まる時がきた。

 緊張してくる。

 オクタヴィノール殿下は、わたしとの婚約のおおよそのところを、国王陛下と王妃殿下には認めてもらっていると聞いている。

 ただ、それでも、わたしを謁見して幻滅されたら、認めていく方向だったのを、認めない方向に変えてしまうことも、可能性としてはないとは言えない。

 しかし、そうは言っても、わたしに言えるのは、

 「オクタヴィノール殿下への熱い想い」

 「オクタヴィノール殿下と一緒に幸せになること」

 「ルクシブルテール王国の人たちを幸せにしていくこと」

 ということだ。

 この想いを、一生懸命伝えていく。

 そうすれば、国王陛下も王妃殿下も、わたしのことをオクタヴィノール殿下の婚約者として認めてくれるだろう。

 わたしは、オクタヴィノール殿下と一緒に謁見の間に向かいながら、そう思うのだった。



 そして、わたしは今、国王陛下と王妃殿下の謁見を受けていた。

 緊張している。

 もしオクタヴィノール殿下が一緒にいなければ、胸のドキドキは頂点にまで達していたかもしれない。

 国王陛下は、六十三歳。

 ゲームでは、オクタヴィノール殿下ルート以外では、主人公オディナティーヌと話すことはないので、名前の登場だけになる。

 オクタヴィノール殿下ルートでは、体調が良くない状態で、主治医にもそれほど長くはもたないと言われていたので、オクタヴィノール殿下の婚約を急いでいた。

 しかし、オクタヴィノール殿下とわたしが婚約の方向に向かい始めてからは。体調が回復していく。

 二人の婚約に向けての動きが、国王陛下の体にいい影響を与えることになったのだと思っている。

 わたしは、オクタヴィノール殿下とわたしの婚約も、同じように国王陛下の体にいい影響を与えることを願っていた。

 国王陛下は、今の時点でも体調は良くないと聞いていた。

 その為、力のない姿での対面になる可能性もあると思っていた。

 しかし、実際に対面すると、威厳があり、圧倒されてしまう存在だ。

 大臣クラスでさえも、毎回、国王陛下の前では、その威厳に圧倒され、萎縮してしまうことが多いと言う話。

 今だけなのかもしれないが、体調が良くないということはないように思えた。

 その国王陛下に圧倒され、萎縮することがないオクタヴィノール殿下は、それだけでもすごい方だと思う。

 わたしはその点でもオクタヴィノール殿下に心が傾いていく。

 ルクシブルテール王国内では善政を行っていて、国民からは怖れられつつも尊敬されている。

 王妃殿下は五十一歳。

 穏やかな顔立ちをしていて、美しい方だ。

 やさしく、しかも芯の強い人柄で、国民に慕われている存在だ。

 剛の国王陛下と柔の王妃殿下。

 お互いに支え合って、理想的な形だと言える。

 デュヴィテール王国にまでその名声は聞こえてくる。

 こうして対面をするだけでも、自分が小さい存在に思えてしまう。

 この方たちの前で、話をすることができるのだろうか?

 特に国王陛下には圧倒され、萎縮してしまい、どもってしまって、何も言えなくなってしまうのでは?

 そういう弱気な気持ちにもなってくる。

 しかし、そういうことを言っている場合ではない。

 ここで、わたしが国王陛下と王妃殿下を幻滅させたのでは、オクタヴィノール殿下に申し訳ない。

 そして、継母には、ここぞとばかりに反撃されるだろう。

 ここはわたしの運命を決める時なのだ!

 わたしは心を整えた後、

 「国王陛下、そして王妃殿下、初めてお目にかかります。わたしは、ボードリックス公爵家令嬢リディテーヌと申します。本日は招待をしていただき、まことにありがとうございます」

 とあいさつし、頭を下げた。