わたしは悪役令嬢になった転生一度目、婚約破棄され、処断された。転生二度目、浮気され心も体も壊れた。相手側は自分が間違っていたと後で思う。でも間に合わない。転生三度目は、素敵な王太子殿下に溺愛されます。

 わたしは、継母の嫌味に対し、いつも、

 「ご忠告ありがとうございます。でもオクタヴィノール殿下は、ありがたいことに、わたしに好意を持っていただいております。これからも仲を深めていきたいと思います。ボードリックス公爵家の名になるように、一生懸命努力をしていきます」

 と言って頭を下げていた。

 継母はその度に。

 「あなたにそういう第度を取られると、それ以上言う気力がなくなる。あなたが嫌味を言ってきたら、何倍にも返してあげるのに……」

 と口惜しそうにしていた。

 今はまだ少し時間が経つと、またわたしに対する嫌味を言う気力が戻ってくるようだ。

 でもわたしがこの対応を続けていけば、その内、嫌味を言わなくなるか、言ったとしても、力のないものになってくれるのでは、という期待を持っていた。



 八月に入り、夏休みになった。

 わたしが住んでいるところは、七月と同じで、八月も暑くなる。

 ただ、ある程度の湿度はあるものの、蒸し暑さはそれほどない。

 わたしの出発点の人生で住んでいたところは、八月になると、蒸し暑くてたまらなかった。

 もちろん夏は夏で楽しい思い出もあったのだけれど、暑さに弱いわたしなので、つらい思い出の方が多い気がする。

 今も暑さに弱いのは同じだ。

 ただ、蒸し暑さがそれほどないのと、八月に入ると、夜は結構涼しくなってしのぎやすくなるので、わたしとしては助かっている。

 学校が休みになるので、一週間に一度の逢瀬が、三日に一度に増えた。

 これはうれしいことではあったのだけれど、わたしはそれでも満足はできなかった。

 「オクタヴィノール殿下に毎日会いたい。一緒に過ごしたい」

 この気持ちは強くなっていく一方だった。



 そう思っていた八月中旬のある日。

 わたしは今日もオクタヴィノール殿下に招待を受けていた。

 三日に一度会えるようになっていたとはいうものの。会えない日は寂しくてしょうがない。

 しかし、オクタヴィノール殿下と会った途端、そういう気持ちはすぐに忘れてしまった。

 それほどオクタヴィノール殿下は素敵な方なのだ。

 庭でお茶会をした後、オクタヴィノール殿下の寝室で二人だけの世界に入っていくのがいつものパターンになっている。

 今日もオクタヴィノール殿下と一緒に、恋人どうしとして過ごせてうれしい。

 特に二人だけの世界に入っていけることが何よりもうれしい。

 ああ、殿下、好きです!

 そうわたしが思っていると。

 「リディテーヌさん、今日は、あなたに大切な話があります」

 とオクタヴィノール殿下は言ってきた。

 真剣な表情だ。

 まさか、別れ話?

 もしそうだったら、つらさと苦しさと悲しみにより、この場で泣き伏してしまいそうだ。

 一瞬そう思ったのだけれど、わたしたちは、二人だけの世界にも入った仲。

 それはありえない話だ。

 では、何だろう?

 そう思いつつ、オクタヴィノール殿下の次の言葉を待つ。

 すると、オクタヴィノール殿下は、

 「リディテーヌさん、わたしはあなたとまず婚約したいと思っています。そして、結婚したいと思っています」

 と言った。

 わたしは、とても驚いた。

 婚約……。

 オクタヴィノール殿下がわたしと婚約したいと言っている。

 もちろんわたしも、オクタヴィノール殿下と婚約し、結婚したいと思っていた。

 しかし、それはもっと先のことだと思っていた。

 オクタヴィノール殿下ルートで、主人公のオディナティーヌとオクタヴィノール殿下が婚約するのは、学校を卒業した後の四月だ。

 そのことからすると、想像しなかったほどのスピードで、オクタヴィノール殿下とわたしの仲は深まっていると思う。

 うれしいことではあるけれど、戸惑うところはどうしてもある。

 オクタヴィノール殿下は、

 「急にこのような話をあなたにして申し訳ありません。しかし、わたしたちは、この一か月ほどで一気に仲を深めました。わたしはあなたが好きでたまりません。あの舞踏会の日以来、わたしはあなたのものになったのです。それだけではなく、妃としても十分な能力があることも理解いたしました。どうか、わたしとの婚約をまず受け入れてくださいませ。お願いです。わたしはあなたと一緒に幸せになりたいのです。そして、あなたと一緒に、ルクシブルテール王国の国民を幸せにしたいのです」

 と言った後、頭を下げた。