わたしは悪役令嬢になった転生一度目、婚約破棄され、処断された。転生二度目、浮気され心も体も壊れた。相手側は自分が間違っていたと後で思う。でも間に合わない。転生三度目は、素敵な王太子殿下に溺愛されます。

 二人のダンスが終わった後、少しの休憩を経て、ダンスは再開される。

 ダンスの準備をする人たち。

 「リディテーヌさん、それではよろしくお願いします」

 オクタヴィノール殿下は微笑みながらわたしに言う。

 いよいよオクタヴィノール殿下とダンスを踊る時がきた。

 わたしは急激に緊張してくる。

 ダンスは自信があった。

 幼い頃から一生懸命練習してきて、ダンス教師にも、

 「これほどの腕前をお持ちの方は。この王国にはほとんどおられないでしょう」

 と言って、褒められていた。

 もちろんルシャール殿下には及ばない。

 今日のダンスを見て、それは実感した。

 でも、ルシャール殿下以外のデュヴィテール王国の人たちには負けない自信はあった。

 しかし、推しの方と一緒に踊るということがどういう意味を持つことか、ということまではさすがに想定はできなかった。

 胸のドキドキがどんどん大きくなっていく。

 この情勢化で、普段通りのダンスを披露することができるのだろうか?

 失敗して、出席者の笑いものになり、オクタヴィノール殿下に嫌われる。

 「わたしも恥をかかされてしまった……」

 と言われるかもしれない。

 そして、継母に嘲笑されてしまうだろう。

 オディナティーヌは口には出さないと思う。

 しかし、内心はここぞとばかりに軽蔑の心に満たされるに違いない。

 わたしがマイナスの気持ちに心が占められ始めていた時。

 「緊張しなくて大丈夫ですよ。わたしはあなたに合わせますから、あなたの思いのままに踊ってください」

 オクタヴィノール殿下がわたしに微笑みながら言ってくれた。

 オクタヴィノール殿下がわたしを支えようとしてくれる。

 それに応えなければならない!

 わたしの心の中に力が湧いてきた。

 「力をいただいて、ありがとうございます。わたし、一生懸命踊ります」

 「わたしも一生懸命踊ります。お互いにいい思い出として残るようなダンスにしていきましょう」

 「よろしくお願いします」

 「こちらこそよろしくお願いします」

 オクタヴィノール殿下は、わたしを包み込むような笑顔でわたしに言う。

 胸のドキドキはなかなかおさまらないのだけれど、緊張の方は少しずつほぐれ始めていた。

 とにかく今は、踊ることに全エネルギーを集中しよう!

 これだけわたしに気づかいをしていただいているオクタヴィノール殿下の為に!

 そして、ダンスは再開された。

 王室楽団が上質な音楽を演奏する。

 その中では出席者たちが、思い思いの質の高いダンスを展開していく。

 オクタヴィノール殿下とわたしも踊り始めた。

 最初の内は、心がフワフワして、ぎこちない動きになっていた。

 胸のドキドキは、一旦はおさまる方向だったのだけれど、これほどオクタヴィノール殿下と近接してくると、それを抑えることは困難になってくる。

 それだけではない。

 恥ずかしさが一気に押し寄せてきた。

 わたしは一時的に、心のコントロールができなくなる。

 こんなことなら、オクタヴィノール殿下の誘いを断るべきだった……。

 そんな思いさえもわたしの心の中に湧いてくる。

 しかし、そんなわたしを救ってくれたのが、オクタヴィノール殿下の巧みなリード。

 そのおかげで、だんだん本来のわたしの動きになっていく。

 そして、オクタヴィノール殿下との息もピッタリと合うようになってきた。

 もう何年も前から一緒に踊っていたパートナーどうしと思えるほどだ。

 これはやはり、オクタヴィノール殿下のダンスの技量が優れているからだろう。

 先程のルシャール殿下のダンスと比べても遜色はない。

 いや、もうルシャール殿下のことは考えなくてもいいだろう。

 わたしは、オクタヴィノール殿下と踊ることができれば、もうそれで十分だ。