わたしは悪役令嬢になった転生一度目、婚約破棄され、処断された。転生二度目、浮気され心も体も壊れた。相手側は自分が間違っていたと後で思う。でも間に合わない。転生三度目は、素敵な王太子殿下に溺愛されます。

 舞踏会当日。

 この舞踏会の会場になった王宮内のホール。

 今ここにわたしはいる。

 王室や貴族が招待され、また。平民の代表者も招待されていた。

 ボードリックス公爵家からは、わたしだけでなく、継母とオディナティーヌも出席している。

 特にオディナティーヌにとってこの舞踏会は、ルシャール殿下の婚約者としてのお披露目会も兼ねていた。

 オディナティーヌは礼儀作法が苦手だったのだけれど、ダンスも苦手だった。

 それが、リディテーヌがオディナティーヌに対して小言を言うことにつながっていた。

 リディテーヌにはオディナティーヌをイジメている認識はなかった。

 しかし、結局のところ、それはオディナティーヌにとってはリディテーヌにイジメられているという認識になってしまっていた。

 わたしは、そういうことを理解していたので、ダンスについての小言もオディナティーヌには、言わなくなっていた。

 オディナティーヌは、ルシャール殿下と婚約した後、舞踏会において、ルシャール殿下と一緒にダンスを踊ることが決まっていた。

 継母とオディナティーヌは大いに喜んだ。

 しかし……。

 王太子殿下は婚約すると、その後に開催される舞踏会で、自分の婚約者を披露することになっている。

 この直後か、その次の舞踏会でそれをするのが普通だ。

 ゲームでのリディテーヌは、ルシャール殿下婚約直後の舞踏会でお披露目をしている。

 ルシャール殿下とオディナティーヌの場合も、婚約が決まった直後の舞踏会で、婚約者の披露を行うことは検討されていた。

 でも、この時点でのオディナティーヌは、ルシャール殿下とダンスが踊れるほどの最低の技量にも達していなかった。

 オディナティーヌはもともと心やさしく、気づかいも人一倍できて、才色兼備。

 だからこそ、ルシャール殿下の心を最終的につかむことができたのだと思う。

 でも「堅苦しいこと」は苦手。

 礼儀作法に身が入らないのも、ダンスが苦手なのをそのままにしているのもその為。

 それ以外のお稽古事は、幼い頃からきちんとこなしてきたというのに、礼儀作法とダンスについては、「堅苦しいこと」なので敬遠してきた。

 わたしからすると、ダンスは特に「堅苦しいこと」には入らないと思っている。

 オディナティーヌがそう思っているというのが、どうにも理解できないところはある。

 継母はダンスがうまい。

 その子供であるオディナティーヌもその気になれば上達すると思う。

 いずれにしても、このままではルシャール殿下の婚約者としてのお披露目が、どんどん遅くなっていく。

 それではかわいそうだ。

 さすがにわたしは、オディナティーヌにそのことを指摘したかった。

 でもまたイジメと認識されるだけだと思い、自重せざるをえなかった。

 ただ、今まではオディナティーヌを甘やかしてきた継母が、今回についてはオディナティーヌに話をしたらしく、練習を重ねた結果、ルシャール殿下とのダンスはそれなりにできるようになったようだ。

 これで、七月の舞踏会には間に合いそうだ。

 その話を聞いたわたしは、ホッとした。

 ルシャール殿下とオディナティーヌはこのまま結婚まで行くだろうとは思っていた。

 でも既にゲームではなかったルートを全員が歩み始めている。

 この二人の関係だって、いきなり壊れる可能性はなくはない。

 ダンスがもしうまくいかなったとしたら、それで二人の関係が壊れてしまうことだって、ありえなくはないだろう。

 もしそうなったら、わたしの人生にどういう影響ができるのか、想定がつかなくなっていくかもしれない。

 今の人生の想定は、ルシャール殿下とオディナティーヌが結婚することを前提としているからだ。

 とにかく、これで二人のダンスはうまくいきそうなので、ホッとしている。

 継母は今日ボードリックス公爵家の屋敷を出る前、わたしに、

 「オディナティーヌは今日、ルシャール殿下と踊るのよ。そして、出席者全員の祝福を受けるの。ルシャールは素敵な婚約者として高く評価されているのだけれど、これでオディナティーヌの評価はますます高くなっていくことでしょう。あなたと違って素敵な女性であるオディナティーヌを、あなたも祝福しなさいよね」

 と言った後、高笑いをした。

 継母は、回数こそ大きく減ってはいるものの、わたしに嫌味をいいたいという気持ちを持っている。

 ただ嫌味を今日のように言ったとしても、以前よりは抑え気味の表現になっている。

 わたしも、

 「あなたと違って素敵な女性であるオディナティーヌ」

 と言われるとさすがに少し腹が立ってくる。

 しかし、それ以上に、わたしの努力が実ってきて、継母のわたしへの対応は、三月時点に比べると、相当いい方向に向かっていると思っていたので、うれしい気持ちの方が強かった。