わたしは悪役令嬢になった転生一度目、婚約破棄され、処断された。転生二度目、浮気され心も体も壊れた。相手側は自分が間違っていたと後で思う。でも間に合わない。転生三度目は、素敵な王太子殿下に溺愛されます。

 わたしは心を入れ替え、新しい人生を歩み出した。

 とはいうものの、周囲の評判はすぐに良くなるものではない。

 最初の一週間ほどは、わたしが微笑んでも返ってくるのは、わたしを恐れ、嫌がる表情だけだった。

 いかにリディテーヌというキャラクターが周囲に対して、恐怖をもたらし、嫌がられていたかが良くわかるというものだ。

 わたしは、そのような対応を受ける度に、少し落ち込んでいた。

 しかし、その程度でめげるわけにはいかなかった。

 わたしは、より一層。気品を維持しながら、やさしい気持ちで接するように心がけた。

 その努力は、二週間目になり、ようやく少しずつではあるけれども、実を結び始めてきた。

 まだ数人ではあるものの、わたしの微笑みながらのあいさつに対して、微笑みながら返事をしてくれるようになった。

 いい方向に進み始めたと思う。

 クラス全員とそうしたあいさつができるように、もっと努力をしていきたい。

 ルクディアさんとの関係は、わたしがルクディアさんの美しさを認め、言い争いをしなくなってからは、良いということは言えないまでも、悪化の方向に向かうことはなかった。

 嫌味は依然として言ってはくるものの、勢いは大幅に失っていた。

 ルクディアさんは、わたしがルクディアさんの

 「軍門に降った」

 と言って喜んでいたのだけれど、それも実質的なものは全くなかったので、そのことについて、わたしに話すことも減っていった。

 そして、わたしがルクディアさんの嫌味を聞き流すようにしているので、張り合いがなくて困っているようにさえ思えた。

 このままいけば、嫌味を言うこともなくなるだろうと思っていた。

 思っていたのだけれど……。



 わたしたちが入学六年目を迎えた、春の四月上旬のある日。

 放課後の教室で、わたしはルクディアさんと二人で対峙していた。

 ルクディアさんが、

 「あなたと二人で話をしたい」

 とわたしに言ってきたのだ。

 二人きりになって、また激しくわたしに嫌味を言う気になったのだろうか?

 わたしはそう思っていた。

 ここのところ、わたしに対する嫌味はまずますその勢いを失っていた。

 そのことについてもストレスがたまり、一気に噴き出すのでは?

 そういう懸念を持っていた。

 とはいうものの、わたしとしてはもう言い争いをする気は全くない。

 いつものように聞き流すだけの話だ。

 そう思いながら、ルクディアさんと向かい合っている。

 ルクディアさんは、最近ではなかった厳しい表情をしていた。

 「リディテーヌさん、わたしはちょっと気になることを聞いたの」

 「気になること?」

 「単刀直入に言うわ。あなた、ルシャール殿下の婚約者の座を妹に譲ったんですってね。想像もできないことだわ」

 ルクディアさんはあきれたように言う。

 そして、

 「理由はなんなの? まあ、ルシャール殿下があなたと二人で会う機会が会った時に、その性格のわがままさとか、傲慢な態度をルシャール殿下に認識されて、嫌われたということなんでしょうけど」

 そう言った後、ルクディアさんはわたしをあざ笑った。

 それにしても、自分もわがままで傲慢な態度を取るというのに、相変わらずそのことを棚に上げて、人のことを指摘するとは……。

 なんとなく笑いがこみあげてくる。

 そして、わたしは、我慢できずに少し笑った。

 すると、ルクディアさんは、

 「何を笑っているのかしら。わたしに指摘されるのがそんなにうれしいのですか? あきれた方ですね。そんなことだから、ルシャール殿下の婚約者の座を妹に譲ることになるのですわ」

 と言った後、また高笑いをした。

 わたしは、そんなルクディアさんに対しては腹が立つことはない。

 「ますます美しくなってきていいなあ……」

 と思うのだった。