夕方。
今、わたしはお父様と、お父様の私室で、席に座り向き合っている。
二人だけでこうして話すのは、いつ以来だろうか?
機会自体があまりなかったので、思い出すことが難しい。
この場で、婚約者候補のことを断らなければならず、オディナティーヌに婚約者候補を変更したいと申し出をしなければならない。
今日、この時間になるまで、その口上を考えてきたのだけれど、やはり緊張をしてしまう。
わたしは、お父様にあいさつをした後、
「お父様、このように二人だけでお話をする時間を作っていただきまして、ありがとうございます」
と言った。
「今日の朝は具合が悪いと言っていたそうだが、大丈夫なのか?」
心配そうに言うお父様。
「大丈夫とまでは言えませんが、だいぶ良くなってきております」
「そうか。それならいいのだが」
「ただ、夕食をご一緒にとるのは無理です」
「わたしとしては、家族で食事をとりたいし、お前と一緒に食事をとりたい。でも無理というのなら仕方がない」
残念そうなお父様。
わたしもお父様とだけであれば一緒に食事をとりたいと思っているのだけれど……。
「申し訳ありません」
わたしとしてはただ謝るしかない。
「いや、謝る必要はない」
お父様は、そう言った後、
「それで、話というのは?」
と言ってきた。
いよいよ話すべき時がきた。
わたしは心を整えた後、
「お父様、わたしは今まで悩んでまいりました。わたしはルシャール殿下の婚約者としてふさわしくないのでは、ということを。でも正式婚約が間近に迫ってきたので、結論を出さなくてはいけないと思い、今日、その結論を出しました」
と言った。
「どう結論を出したというのだ?」。
お父様の言葉に、わたしは一瞬、言葉につまりそうになった。
これから話すことは、お父様の意志に反すること。
しかし、それでも言わなければならない。
「わたしはオディナティーヌに婚約者候補の座を譲ることを決意いたしました」
わたしがそう言うと、お父様はとても驚いた。
そして、しばらくの間は、わたしにどう対応すべきか、ということを考えていたようだ。
やがて、
「お前はいったい何を言っているのだ。わたしは今まで、お前こそルシャール殿下の王太子妃にふさわしくなるようにと思って育ててきたのだ。決して、オディナティーヌではない」
と言ってきた。
そう言ってくれるのはうれしい。
しかし、この言葉で、自分の決意が揺らいではいけない。
「わたしは、ルシャール殿下にふさわしい女性ではありません。それだけの品性は持ち合わせておりません。ルシャール殿下の方も嫌がり、もし婚約を了承しても、やがて婚約を破棄されてしまうと思います。その点、オディナティーヌは品性を持ち合わせておりますので、わたしはオディナティーヌの方が婚約者とふさわしいと思っております。したがいまして、わがボードリックス公爵家におけるルシャール殿下の婚約者候補は、オディナティーヌにしていただきたいと思います。申し訳ありませんが、受け入れていただきますよう、お願い申し上げます」
わたしはそう言って頭を下げた。
お父様は、少し考えた後、
「お前は、周囲のものたちが、お前のことを良く言っていないことを気にしているのだな?」
と言った。
「お父様もわたしについての噂は聞いておられるようですね?」
「言いたくはないが、わがままだとか傲慢な態度をとるという話は聞いている。その思われてしまうのも無理はないと思う。そういう性格がお前にあることは、わたしも認識せざるをえないと思っている」
ちょっとガックリくる話ではあるが、リディテーヌというキャラクターというのは、そういう性格なのだから、言われても仕方のないところだ。
今、わたしはお父様と、お父様の私室で、席に座り向き合っている。
二人だけでこうして話すのは、いつ以来だろうか?
機会自体があまりなかったので、思い出すことが難しい。
この場で、婚約者候補のことを断らなければならず、オディナティーヌに婚約者候補を変更したいと申し出をしなければならない。
今日、この時間になるまで、その口上を考えてきたのだけれど、やはり緊張をしてしまう。
わたしは、お父様にあいさつをした後、
「お父様、このように二人だけでお話をする時間を作っていただきまして、ありがとうございます」
と言った。
「今日の朝は具合が悪いと言っていたそうだが、大丈夫なのか?」
心配そうに言うお父様。
「大丈夫とまでは言えませんが、だいぶ良くなってきております」
「そうか。それならいいのだが」
「ただ、夕食をご一緒にとるのは無理です」
「わたしとしては、家族で食事をとりたいし、お前と一緒に食事をとりたい。でも無理というのなら仕方がない」
残念そうなお父様。
わたしもお父様とだけであれば一緒に食事をとりたいと思っているのだけれど……。
「申し訳ありません」
わたしとしてはただ謝るしかない。
「いや、謝る必要はない」
お父様は、そう言った後、
「それで、話というのは?」
と言ってきた。
いよいよ話すべき時がきた。
わたしは心を整えた後、
「お父様、わたしは今まで悩んでまいりました。わたしはルシャール殿下の婚約者としてふさわしくないのでは、ということを。でも正式婚約が間近に迫ってきたので、結論を出さなくてはいけないと思い、今日、その結論を出しました」
と言った。
「どう結論を出したというのだ?」。
お父様の言葉に、わたしは一瞬、言葉につまりそうになった。
これから話すことは、お父様の意志に反すること。
しかし、それでも言わなければならない。
「わたしはオディナティーヌに婚約者候補の座を譲ることを決意いたしました」
わたしがそう言うと、お父様はとても驚いた。
そして、しばらくの間は、わたしにどう対応すべきか、ということを考えていたようだ。
やがて、
「お前はいったい何を言っているのだ。わたしは今まで、お前こそルシャール殿下の王太子妃にふさわしくなるようにと思って育ててきたのだ。決して、オディナティーヌではない」
と言ってきた。
そう言ってくれるのはうれしい。
しかし、この言葉で、自分の決意が揺らいではいけない。
「わたしは、ルシャール殿下にふさわしい女性ではありません。それだけの品性は持ち合わせておりません。ルシャール殿下の方も嫌がり、もし婚約を了承しても、やがて婚約を破棄されてしまうと思います。その点、オディナティーヌは品性を持ち合わせておりますので、わたしはオディナティーヌの方が婚約者とふさわしいと思っております。したがいまして、わがボードリックス公爵家におけるルシャール殿下の婚約者候補は、オディナティーヌにしていただきたいと思います。申し訳ありませんが、受け入れていただきますよう、お願い申し上げます」
わたしはそう言って頭を下げた。
お父様は、少し考えた後、
「お前は、周囲のものたちが、お前のことを良く言っていないことを気にしているのだな?」
と言った。
「お父様もわたしについての噂は聞いておられるようですね?」
「言いたくはないが、わがままだとか傲慢な態度をとるという話は聞いている。その思われてしまうのも無理はないと思う。そういう性格がお前にあることは、わたしも認識せざるをえないと思っている」
ちょっとガックリくる話ではあるが、リディテーヌというキャラクターというのは、そういう性格なのだから、言われても仕方のないところだ。
