Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー

そのときだった。

愛生がふと窓の方を見て、小さく首をかしげた。

「……だれか、いる?」

柚歩は驚いて視線を向けたが、窓の外には何もない。
風もないのに、胸元の指輪がふっと揺れた。

琉生も一瞬だけ背中をさすりながら「寒い?」と呟いた。
寒くはない。
ただ、空気のどこかがわずかに沈んだような気配があった。

優海からもメッセージが届いた。

「今日、なんか変な感じしなかった? 声が……少し揺れてた気がする。」

久遠からもほぼ同時にメッセージが届いた。

「柚歩。
 “声”が、少し動いた。
 気のせいじゃないと思う。」

胸の奥が静かにざわめいた。
痛みではない。
恐怖でもない。
ただ、何かが近づいている気配だけが、確かにあった。

そのころ、遠く離れたどこかで、御影は静かに歩みを進めていた。
光が揺れたことを、影は決して見逃さない。

「……そろそろ、ですね」

誰に向けた言葉なのかはわからない。
ただ、御影の足取りは迷いなく、静かに、確実に未来へ向かっていた。

夜、家の中が静かになったころ、柚歩は窓際に座り、深い青を含んだ夜風を胸に吸い込んだ。
歩の指輪をそっと握り、胸の奥に広がる光を確かめた。

歩の光も、優海の光も、久遠と麻衣の光も、そして琉生と愛生の光も、
全部がひとつの方向へ伸びていた。

――未来へ進む準備は、もうできていた。

柚歩はゆっくり目を閉じ、胸の奥に広がる静かな光を受け止めた。
歩の影を抱えたまま、未来へ進む。
その決意が静かに形になっていくのを感じた。