「……あんな顔、してたんだな……柚歩」
三年前の記憶の中の柚歩は、泣いていて、震えていて、壊れそうで、だからこそ離れた。
けれど今日の柚歩は、静かに笑っていた。
強くなったわけじゃない。無理をしているわけでもない。
ただ、あの部屋の灯りの中で、確かに“生きていた”。
琉生は立ち止まり、夜空を見上げた。
雲の切れ間から星がひとつだけ見えて、その光が遠くて、でもどこかで柚歩の胸元の光と重なるように思えた。
あのペンダントが揺れた瞬間のことを思い出す。
光ってはいなかった。
けれど、確かに“反応した”。
「……なんで、あのとき……」
言いかけて、言葉が喉の奥で止まった。
理由はわからない。ただ、あの揺れは偶然じゃないと、どこかで感じていた。
胸の奥に、誰かに見られているような、触れられたような、微かなざわめきが走った。
「……気のせい、だよな」
そう言って歩き出したのに、ざわめきは消えなかった。
風は吹いていないのに、背中のどこかがひやりとする。
影が近づいたわけじゃない。
ただ、心のどこかに触れたような気配だけが残った。
「……柚歩……」
名前を呼んだ声は弱くて、夜に吸い込まれていった。
三年間、言えなかった言葉が胸の奥で渦を巻き、今日やっと少しだけ外に出た。
でもまだ全部は言えていない。言えるはずもない。
ゆっくりでいいと言われた。
急がなくていいと言われた。
その言葉が救いであり、同時に痛みでもあった。
「……ゆっくり、か……」
歩きながら、琉生は胸に手を当てた。
そこには何もない。光も、ペンダントも、指輪も。
けれど、確かに何かが動き始めていた。
三年間止まっていた心臓の奥の場所が、今日、少しだけ動いた。
そして、その動きに呼応するように、遠く離れた柚歩の胸元で、眠っているはずの光がほんのわずかに揺れたことを、琉生は知らない。
夜の道を歩く足音が静かに遠ざかり、影はまだ姿を見せないまま、ただ心の奥に薄く触れた気配だけを残して……。
三年前の記憶の中の柚歩は、泣いていて、震えていて、壊れそうで、だからこそ離れた。
けれど今日の柚歩は、静かに笑っていた。
強くなったわけじゃない。無理をしているわけでもない。
ただ、あの部屋の灯りの中で、確かに“生きていた”。
琉生は立ち止まり、夜空を見上げた。
雲の切れ間から星がひとつだけ見えて、その光が遠くて、でもどこかで柚歩の胸元の光と重なるように思えた。
あのペンダントが揺れた瞬間のことを思い出す。
光ってはいなかった。
けれど、確かに“反応した”。
「……なんで、あのとき……」
言いかけて、言葉が喉の奥で止まった。
理由はわからない。ただ、あの揺れは偶然じゃないと、どこかで感じていた。
胸の奥に、誰かに見られているような、触れられたような、微かなざわめきが走った。
「……気のせい、だよな」
そう言って歩き出したのに、ざわめきは消えなかった。
風は吹いていないのに、背中のどこかがひやりとする。
影が近づいたわけじゃない。
ただ、心のどこかに触れたような気配だけが残った。
「……柚歩……」
名前を呼んだ声は弱くて、夜に吸い込まれていった。
三年間、言えなかった言葉が胸の奥で渦を巻き、今日やっと少しだけ外に出た。
でもまだ全部は言えていない。言えるはずもない。
ゆっくりでいいと言われた。
急がなくていいと言われた。
その言葉が救いであり、同時に痛みでもあった。
「……ゆっくり、か……」
歩きながら、琉生は胸に手を当てた。
そこには何もない。光も、ペンダントも、指輪も。
けれど、確かに何かが動き始めていた。
三年間止まっていた心臓の奥の場所が、今日、少しだけ動いた。
そして、その動きに呼応するように、遠く離れた柚歩の胸元で、眠っているはずの光がほんのわずかに揺れたことを、琉生は知らない。
夜の道を歩く足音が静かに遠ざかり、影はまだ姿を見せないまま、ただ心の奥に薄く触れた気配だけを残して……。

