Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー

夕方の光がゆっくり部屋に沈み、壁に淡い影を落としていた。
柚歩は愛生を寝かしつけたあと、静かな呼吸の中で自分の胸の奥の光を確かめていた。

そのとき、扉の向こうで久遠が短く息を整える気配がした。

「……柚歩。話さなきゃいけないことがある」

その声は強くなくて、でも逃げ場を与えない静かな温度を持っていた。
柚歩はゆっくり顔を上げた。

久遠は少しだけ視線を落とし、
三年間抱えてきた影を言葉に変えるように、ゆっくり口を開いた。

「三年前……兄さんは、一度だけ帰国してた」

空気がふっと止まった。
柚歩の胸の奥が静かに沈む。

「でも……会わなかった。いや、会えなかったんだと思うんだ。
 会う資格がないって、自分で決めて……そのまま戻った」

言葉が胸の奥に落ちていく。
痛いのに、どこかで納得してしまう自分がいた。

久遠は続けた。

「……あの日、お前の声を聞いたのは兄さんじゃない」

柚歩は息を呑んだ。