Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー

優海が震える声で言う。

「……柚歩ちゃん……」

柚歩は何も言えなかった。
言葉が出ない。涙も出ない。
ただ、胸の奥がぐしゃぐしゃにかき乱されていく。

病院を出たあと、優海は何度も何度も柚歩の顔を覗き込んだ。
そこに、優海から連絡を受けた久遠がやってきた。

柚歩はゆっくり息を吸い、胸の奥に沈んでいく現実を受け止めようとした。

久遠がそっと肩に触れたとき、柚歩はかすかに首を振った。

「……琉生さんには、言わないで。
 今は……言えない」

その声は震えていなくて、
ただ、痛みと恐れと守りたいものを抱えたままの静かな温度だった。

久遠は何も言わず、ただその決意を受け止めた。

でも柚歩は笑うことも泣くこともできなかった。
家に戻ると、部屋の静けさが急に重くのしかかってくる。

夜、ひとりになった瞬間、胸の奥が崩れた。

「……どうしよう……」

声にした途端、涙が溢れた。
止まらなかった。
未来が見えなくて、怖くて、苦しくて、息が震える。

そのとき、スマホが震えた。
画面には“麻衣”の名前。

柚歩は震える指で通話ボタンを押す。

「……柚歩ちゃん。大丈夫?」

その声は、光のように優しかった。

柚歩は声を詰まらせながら、やっと言葉を絞り出す。

「……麻衣さん……私……どうしたら……」

麻衣は様子のおかしい柚歩の声を聞いて、
呼吸が落ち着くまで、ただ静かに待ってくれる。

そして、そっと言う。

「大丈夫よ。柚歩ちゃんは……ひとりじゃないから」

その言葉が胸の奥に落ちた瞬間、涙がまた溢れた。

影が始まった夜だった。
でも、その影の奥に、かすかな光が確かに揺れていた。