歌い終えたあと、柚歩は静かに息を吐いた。
涙は止まらないのに、胸の奥が少しだけ軽くなっていた。
夜空を見上げる。
星がひとつだけ光っていた。
——大丈夫。
——きっと、大丈夫。
そう思いたかった。
けれど、胸の奥はまだ痛かった。
柚歩はゆっくりと立ち上がり、家へ向かって歩き出した。
その背中を夜の風がそっと押した。
そして——
その歌声を聞いた誰かが、静かに未来を動かし始めていた。
***
同じ頃。
公園から少し離れた歩道を、ひとりの男が歩いていた。
御影は夜風に揺れる木々の音を聞きながら、今日の打ち合わせをぼんやり思い返していた。
そのとき、風に乗って“声”が届いた。
立ち止まり、耳が自然とそちらへ向く。
震えた声。
痛みを抱えた声。
それでも折れずに伸びていく声。
御影はゆっくりと顔を上げた。
公園の奥、街灯の下に小さな影が見える。
けれど、顔までは分からない。
ただ——
その声だけが胸に刺さった。
「……すごい声だ……」
痛みと優しさが同時に宿っている。
壊れそうで、でも折れていない。
光と影が混ざり合ったような声。
御影はしばらく立ち尽くした。
声が止むまで、ただ静かに聴いていた。
やがて歌が終わり、少女の影がゆっくりと歩き去っていく。
御影は動けなかった。
「……あの声……忘れられないな」
名前も知らない。
顔も見えなかった。
ただ、
“あの声の人” として胸に刻まれた。
その声が。
後に自分の人生を少しだけ動かすことになるとは、
まだ知らなかった。
涙は止まらないのに、胸の奥が少しだけ軽くなっていた。
夜空を見上げる。
星がひとつだけ光っていた。
——大丈夫。
——きっと、大丈夫。
そう思いたかった。
けれど、胸の奥はまだ痛かった。
柚歩はゆっくりと立ち上がり、家へ向かって歩き出した。
その背中を夜の風がそっと押した。
そして——
その歌声を聞いた誰かが、静かに未来を動かし始めていた。
***
同じ頃。
公園から少し離れた歩道を、ひとりの男が歩いていた。
御影は夜風に揺れる木々の音を聞きながら、今日の打ち合わせをぼんやり思い返していた。
そのとき、風に乗って“声”が届いた。
立ち止まり、耳が自然とそちらへ向く。
震えた声。
痛みを抱えた声。
それでも折れずに伸びていく声。
御影はゆっくりと顔を上げた。
公園の奥、街灯の下に小さな影が見える。
けれど、顔までは分からない。
ただ——
その声だけが胸に刺さった。
「……すごい声だ……」
痛みと優しさが同時に宿っている。
壊れそうで、でも折れていない。
光と影が混ざり合ったような声。
御影はしばらく立ち尽くした。
声が止むまで、ただ静かに聴いていた。
やがて歌が終わり、少女の影がゆっくりと歩き去っていく。
御影は動けなかった。
「……あの声……忘れられないな」
名前も知らない。
顔も見えなかった。
ただ、
“あの声の人” として胸に刻まれた。
その声が。
後に自分の人生を少しだけ動かすことになるとは、
まだ知らなかった。

