夜の帰り道は、昼間の熱がすっかり冷えて、街灯の光だけが静かに路面を照らしていた。
人の気配はあるのに、どこか世界が遠く感じられるような夜だった。
そのとき——
歩道の端で、誰かがしゃがみ込むように倒れていた。
通り過ぎる人たちはちらりと見るだけで、誰も足を止めない。
スマホを見ながら歩く人、急ぎ足の人、視線を逸らす人。
そのすべてが“見なかったこと”にしていく。
柚歩は立ち止まった。
胸の奥がざわりと揺れた。
「……大丈夫ですか……?」
声をかけると、女性はゆっくりと顔を上げた。
息が荒く、額には汗が滲んでいるのに、どこか無理に笑おうとしていた。
「……ごめんね。急に眩暈がして立っていられなくなって」
弱い声なのに、天真爛漫な響きがあった。
「立てますか?」
「ありがとう……ごめんなさい。立てないので……」
女性は頭がグルグルするのか、立ち上がることもできない様子だった。
柚歩は迷わずタクシーを止めようとしたが、女性は首を振った。
「……ごめん。タクシーじゃ無理……」
その言い方があまりにも弱くて、胸が少し痛くなった。
柚歩はスマホを握りしめ、救急車を呼んだ。
赤いランプの光が近づき、夜の空気が静かに震えた。
人の気配はあるのに、どこか世界が遠く感じられるような夜だった。
そのとき——
歩道の端で、誰かがしゃがみ込むように倒れていた。
通り過ぎる人たちはちらりと見るだけで、誰も足を止めない。
スマホを見ながら歩く人、急ぎ足の人、視線を逸らす人。
そのすべてが“見なかったこと”にしていく。
柚歩は立ち止まった。
胸の奥がざわりと揺れた。
「……大丈夫ですか……?」
声をかけると、女性はゆっくりと顔を上げた。
息が荒く、額には汗が滲んでいるのに、どこか無理に笑おうとしていた。
「……ごめんね。急に眩暈がして立っていられなくなって」
弱い声なのに、天真爛漫な響きがあった。
「立てますか?」
「ありがとう……ごめんなさい。立てないので……」
女性は頭がグルグルするのか、立ち上がることもできない様子だった。
柚歩は迷わずタクシーを止めようとしたが、女性は首を振った。
「……ごめん。タクシーじゃ無理……」
その言い方があまりにも弱くて、胸が少し痛くなった。
柚歩はスマホを握りしめ、救急車を呼んだ。
赤いランプの光が近づき、夜の空気が静かに震えた。

