Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー

外の街灯だけがカーテン越しに淡く揺れた。
その揺れが胸の奥のざわつきをそっと撫でるように広がり、柚歩はベッドの端に座った。
スマホを両手で包むように持ったまま、しばらく動けずにいた。

今日のことが胸の奥で何度も反芻される。
エントランスでの偶然、
落とした資料、
触れそうで触れなかった指先、
優しい声、
気遣う言葉、

どうして、あんなに……。

思い出すたびに胸の奥がじんわり熱くなり、息が浅くなる。

スマホの画面を点け、メッセージアプリを開く。
そこに並ぶ“我妻琉生”の名前。
既読のついたままの最後のメッセージ。

【無理のない範囲で大丈夫ですので】

ただの気遣い、ただの仕事のやり取り。
なのに、その一文が胸の奥に深く沈んでいって、抜けなくなり、触れるたびに熱が広がっていく。

——どうしてこんなに気になるんだろう。

自分でも分からない。
けれど胸の奥のざわつきはもう誤魔化せないほど大きくなっていて、スマホを胸に抱きしめると心臓の鼓動が画面越しに伝わってしまいそうなくらい速くて、息が震えた。

“返信、来ないかな”

そんな期待を抱いてしまう自分が少しだけ怖い。
でも期待してしまう。
期待してしまうことを止められない。

深呼吸をして天井を見上げると、静かな夜の中で、自分の鼓動だけがやけに大きく響き、
その音が胸の奥の熱と重なっていく。

——会いたい。

その言葉が胸の奥で初めて形になり、自分で気づいてしまった瞬間に息が詰まり、会いたいなんて思っちゃいけないのに。
自分の気持ちを持て余してしまいそうになりながら、柚歩はそっと目を閉じた。

夜の静けさの中で、その気持ちだけが確かに息をしていた。