玄関の方から、優海の声が聞こえた。
出勤前の準備をしながら、
ふと耳を澄ませた。
優海の声は、
いつもより少しだけ明るかった。
玄関を開けると、優海と久遠が並んで立っていた。
ふたりの手が、
静かに結ばれていた。
優海は少し照れたように笑った。
「……琉生くん。
私、久遠くんと未来を歩くね。
……結婚する」
その言葉を聞いた瞬間、
胸の奥が静かにほどけた。
もしかしたら、
優海は自分に好意を抱いてくれていたのかもしれない。
でも——
自分はずっと柚歩を忘れられなくて、
探し続けていた。
その痛みを、
優海は代償のように背負ってしまった。
影に立ち続けた優海の時間を、
終わらせてやりたいとずっと思っていた。
だから——
この朝は、
優海の影の時間が終わる日だとわかった。
「……優海。
お前が幸せになるなら、それでいい」
それだけ言うと、
優海は涙をこらえながら笑った。
ローズクォーツの朝の光が、
ふたりの未来を照らしていた。
影の恋は静かに終わった。
そして——
光の未来が始まった。

