Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー

歩が亡くなったあと、
麻衣は誰とも恋をできなかったんだと思う。

歩への想いを胸にしまったまま、
柚歩を支え続けた。
歩が残した光を、未来へ繋ぐために。

夜、ひとりで部屋にいるとき、
麻衣は時々歩の名前を呼んだ。

「……歩くん、どうしていなくなっちゃったの」

返事はない。
でも、呼ばずにはいられなかった。

スモーキークォーツの指輪は、
歩の死後に麻衣が自分で買ったものだった。
歩から預かったあの指輪とは違うものを……。

影の中で光るものが欲しかった。
歩の恋を壊さないまま、
自分の想いを静かに抱きしめられるものが欲しかった。

指輪を指にはめたとき、
麻衣はそっと目を閉じた。

「……歩くん、幸せだったよね。
 友香ちゃんと出会えて……よかったよね」

誰にも届かない声で。
誰にも聞かれない場所で。

麻衣の恋は、
影のまま始まり、
影のまま続き、
影のまま終わっていく。

でもその影は、
決して悲しみだけではなかった。

歩が愛した人を支え、
歩が残した未来を守り、
歩が願った光を繋ぐための——
静かで、深い、影の恋だった。