Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー

式場に足を踏み入れた瞬間、空気がふっと変わった。
深い青を基調とした装飾が、まるで静かな海のように広がっている。
ラピスラズリの青が壁面や花々の間にそっと散りばめられ、
二人が歩む未来を象徴するように、光の道を描いていた。

柚歩はその光景を見た瞬間、胸の奥が静かに震えた。
深い青は、過去の影を抱えながらも前へ進もうとする自分を支えてくれた色。
そして今日、その青は“未来へ踏み出す光”として式場全体に広がっていた。

スタッフに案内され、入場の位置に立つ。
胸元のラピスラズリが、式場の光を受けてふっと揺れた。

新婦の父の代わりとして、優海の父がバージンロードを一緒に歩いてくれることになっていた。
優海の父は目を細めて言った。

「歩が生きていたら、ここに立って大泣きしてただろうな。あいつは、ああ見えても昔から泣き虫だからな」

優海の父は懐かしそうに空をみあげた。
その揺れは、緊張ではなく、未来へ進むための静かな合図のようだった。

その揺れに気づいたのは、祭壇の前に立つ琉生だった。
柚歩が入場する前の静けさの中で、
胸元の青がふっと光を返した瞬間、琉生の胸の奥に温かいものが広がった。

「……綺麗だな」

声には出さなかった。
けれど、その思いは確かに胸の奥で形になっていた。
柚歩が歩いてくる未来を、自分が支える未来を、
今日から本当に始められるのだと実感する温度だった。

式場の扉がゆっくりと開く。

光が差し込み、青の装飾が静かに輝いた。
その光の中を、愛生が歩き出した。

リングボーイとして、トコトコと、小さな足音が式場に優しく広がり、
その音が会場の空気をふっと柔らかくする。

愛生の歩く姿は、
ただ可愛いだけではなく、
未来へ向かう家族の形をそっと示しているようだった。

リングピローを抱えた小さな手が震えている。
けれど、その震えは不安ではなく、
大事な役目を果たそうとする真剣さだった。

参列者たちが微笑む。
その視線の温度が、式場の青と混ざり合い、
静かな祝福の空気をつくっていく。

愛生が祭壇に近づくと、
琉生はそっと膝を折り、目線を合わせた。

「愛生、ありがとう。とても上手だよ」

愛生は胸を張って頷いた。
その小さな仕草が、琉生の胸の奥をさらに温かくする。

光の道を歩くその姿は、
深い青の世界にふわりと溶け込むようで、
まるで光そのものが形を持ったようだった。

胸元のラピスラズリが揺れ、
その揺れが式場の青と呼応する。

柚歩と優海の父はゆっくりとした歩みで琉生に近づいていく。
柚歩の手を琉生に差し伸べた時、

「柚歩のことよろしく頼むね。歩の大切な娘で、私の姪だからね……」

優海の父は少し寂しそうに微笑んだ。


琉生は息を呑んだ。
その姿を見た瞬間、
胸の奥にある“未来へ踏み出す決意”が静かに強くなる。

愛生が振り返り、
柚歩に向かって小さく笑った。

その笑顔が、
三人で歩く未来をそっと照らしていた。

式場の青は、
ただの装飾ではなく、
二人と一人の未来を包む光だった。

そして——
光の道は、確かにそこにあった。