Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー

姿ではなく、声そのものが誰かの心に触れる未来。
その未来が、胸の奥でゆっくりと形を持ち始める。

柚歩は、そっと胸元のペンダントに触れた。
ラピスラズリの青が、スタジオの薄い光を受けてふっと揺れる。
その揺れは、まるで「声を主役にする未来」をそっと示すような光だった。

「柚歩」

機材を片づけていた琉生が、ふと声を落とした。
その声は、スタジオの冷たい空気をやわらかく溶かすように静かで、
柚歩の胸の奥にそっと触れた。

柚歩が振り向くと、
琉生はあの日と同じように優しくて、揺れなくて、ただまっすぐだった。

「君の声は、君の光だよ。姿がなくても、ちゃんと届く。」

その言葉が、胸の奥の未来にそっと触れた。
覆面歌手という選択肢が、静かに輪郭を持ち始める。

そのとき、優海に抱かれながらモニターを見ていた愛生が、
ふわっと笑いながら柚歩の方へ歩いてきた。

「ママの声、すき」

その一言は、どんな評価よりもまっすぐで、
どんな未来よりも温かかった。

「柚歩ちゃん……本当は、この形が一番しっくりきてるんじゃないかな?
 私はね、柚ちゃんが望む形で歌えるなら、それでいいと思うよ」

柚歩は愛生の髪をそっと撫でた。
優海には微笑んでうなずいた。
胸の奥の揺れが静かに整っていく。
逃げるためではなく、声を主役にするための選択。

その未来が、確かに自分の中で固まり始めていた。

ペンダントの青がもう一度揺れた。
その光は、柚歩の胸の奥に芽生えた“声で生きる未来”を、
静かに照らしていた。