ほんの数秒の、短いキスだった。
あたしのファーストキスは、ほろ苦い鉄の味がした。
「ごめんな、ゆず」
和馬くんは俯きながら声を出した。
「逃げてたんだ、俺」
「………」
「健の部屋でおまえらがキスしそうだったのを見てさ、怖くて逃げた」
「和馬くん……」
「あそこでおまえらを引き剥がして、おまえを連れて帰るくらいできたのに……相手が健だったから、それが、できなかった……」
――『どうして、和馬なんだろうって』
和馬くんも、健くんと同じことを……
「俺が大人しく身を引けば、丸く収まるのかなと思って、おまえから離れようと思った」
離れようと……って。
「そんなの、嫌だよ」
「……え?」
「離れてっちゃ嫌だよ。ずっと寂しかった。怖かった。もう、あたしの名前を呼んでくれなくなるんじゃないかって」
「……ゆず」
「怖くて怖くて。健くんが優しくしてくれたけど、やっぱり、あたしは和馬くんじゃなきゃいけなくて」



