健くんは、あたしの目を真っすぐに見て微笑んだ。
「体育祭んとき、俺が和馬に何を言ったか教えてやろうか?」
え? と、健くんを見上げる。
「あの時、おまえを賭けたんだ」
「………」
「短距離走で勝った方が、おまえと付き合えるって。もし俺が負ければ、もう手は出さないって」
そんなことを……
「でも、まさかの同着でさ。決着はつかなくて……。だから、俺にもまだチャンスはあるんだって思ってたんだ」
けど――。
と、健くんは言葉を続けた。
「おまえの気持ちがもうはっきり決まってて。何となくそれがわかったからさ」
健くんが、フッと目を伏せた。
「多分……引きずると思う」
健くんの嗚咽が聞こえる。
「すぐには、諦められないから……」
紅葉の木が揺れる度に、健くんの頬を流れるしずくがキラリと光った。
「でも、おまえを困らせるようなことはしないから」



