少し、夜風を浴びたかった。
ほとんどの生徒が温泉を楽しんでいるこの時間帯は、とてものんびりと時間が過ぎているようだった。
部屋にあった浴衣を着て、ロビーを過ぎて、正面から外へ出る。
紅葉の木や、松の木がライトアップされ、目の前が輝いている。
風が心地いい。
お風呂上りの身体には少し肌寒く感じたが、今は、この冷たさがほしかった。
頭を冷やしたい。
冷静になって、このもやのかかった道をどうやったら速く進めるか、ゆっくり考えたかった。
「――…ッ」
玄関を出てすぐ、誰かの話し声が聞こえてきた。
あたしと同じように、この美しくライトアップされた紅葉でも見に来たんだと思い、その声の方へ足を進めた。
なんてバカだったんだろう。
「……ッ!!!!」
誰の声が聞こえてこようと、真逆に足を進めていればよかったものを。
人の集まるところのほうが安心。
どうして、そんな考え方しかできなかったんだろう。



