ずっと、言わなかっただけ

〜一ノ瀬ひよりside〜

最近、不幸が立て続けに起きている。

①この春、会社の部署異動でもっとも忙しくかつ、厳格であるといわれている総務部へと異動になった

②初月のもっとも忙しいと言われる月末に、高熱を出し撃沈

③おかげで5月は休日も返上し、15連勤

④体調不良の時から、家のトイレの調子が妙に悪かった

そして、今日ついに、、、最悪な事態となった。

5月下旬、もう月末に差しかかる平日のある日だった。

朝、嫌々ながらアラームを止めて急いで支度しようとして、トイレに入った時だった

びちゃっ、、、、、、

私は寝ぼけていた頭で、水浸しになっている床を踏み思わず後ずさった。

「なに!?何なのこれーーーーーー!!!!!!!」

そう、朝起きたら家のトイレが水浸しになっているではないか。

まずい、非常にまずい。

心では分かっていても、頭には尿意と会社に行くことしか考えが浮かばない。

(先月も休んじゃって、大迷惑かけたし、トイレ行きたいし、、、あーもう、どうしよう、、、、、汗)

私はとりあえず、床は諦めて、足を洗い、マッハで着替えて家を出た。

途中コンビニにより、トイレを済ませて朝ごはんと水を買う。

(メイクは、会社でするじゃんっ)

しかし、ついに④の事態が、こんなことになるなんて、心の中は、もう大パニックだ。

会社に着くころには、汗だくで息も絶え絶えだった

エレベーターの扉を閉めようとした、その時だった。

ガっと手を押し込められ、扉が開いた。

その先には、、、

私の幼なじみで、営業部の 神谷 慧 が居た。

慧は、汗だくすっぴんの私を見て少し驚いた顔をした。

「おはよ、どうしたの。」

私は、思わずカバンで顔を隠す。

「おはよう、、、。ちょっとね、、、、。」

慧は、緊急事態だと思ったのか察してそれ以上は聞いてこなかった。

慧がいる、営業部は6階。私がいる総務部は7階だ。

慧は、
「まあ、何かあったら言えよ。」

と、私の頭を軽く撫でてエレベーターを降りていった。

昔から何を考えているか、いまいち掴めない。

私は、エレベーターを降りて、ダッシュでトイレに駆け込むとカバンの奥底にあった素っ気ないメイク道具たちで、軽く顔を作った。

そして、何気ない感じを装ってオフィスに行く。

「おはようございます。」

「おはようございます。」

みんなはチラリとこちらを見るが、特に気付いてないみたいだった。

ただ、1人を除いて。

「おは、、って、先輩!どうしたんですか!?」

後輩の陽菜だった。

「あは、おはよう。」

私は、精一杯の作り笑顔で返す。

しかし、陽菜は私を給湯室へと押し込んだ。

そして、朝の一連の話を聞いた陽菜は

「先輩!いくらなんでも、それはダメですよ!課長に事情話して早退しましょう!!!!」

と言った。

「だけど、先月も休んじゃって、、もう穴を開けられないのよ。」

私と陽菜が、言い合ってると後ろから

「一ノ瀬くん、それは帰った方がいいねえ。」

と課長の声がしたので、振り返ると、課長が急須を持って気まづそうな顔をして立っていた。

オフィスを見ると、部長にお客さんが来ている。

「で、ごめんねお取り込み中、、、」

とっさに、陽菜が課長から急須を取り上げて、

「あはは、お客さん来てましたね!?私、お茶入れしますよ!?」

と言って、立ち去った。

課長は、私に向き合い言った。

「一ノ瀬くん、仕事は大丈夫だから。今月はそんなに先月よりは忙しくないし、、出来る限りはやっておくからとりあえず家をそんな状態のままにしてはだめだね。アパート?下の人にも迷惑がかかるだろうし。」

私は、うつむきながら、課長に言う。

「はい、すみません、、、。すぐに、対処します。」

そう言って、その日は出社してすぐに早退した。

その後は、大家さんと連絡を取り合い修理業者の人に来てもらった。

しかし、最悪なことはここで終わらなかった。

業者さんに見てもらったところ、下の階への浸水は大丈夫だったのだが、、、

「あちゃー、これはまずいっすね。床も古くて、トイレ直ったとしても床も張り替えなきゃっすね。」

大家さんには

「マズイわね、、、トイレ、しばらく使えないってなると住むの困るわよね?」

と言われた。

「困りますっ、、、、泣」

泣きそうになりながらも、そういうが、大家さんにすがってもどうにもならない。

「ごめんなさいね、一ノ瀬さん、、、。修理代はこちらで全額負担するから、、、誰か、頼れる人はいる、、、?」

実家は、遠い。

友達宅は、会社から1時間の距離だ。

今、慣れない環境下でそれは厳しかった。

必死に、頭を悩ませていると携帯に着信が入った。

すいませんと、電話に出る。

「はい、もしも、、、」

「もしもし、俺だけど、、、。」

声の主は、慧だった。

「慧!今ちょっと立て込んでて、、、」

電話を切ろうとすると、

「話は、課長から聞いた。どういう状況?」

と言われた。

そして、私は思い出した。

「慧の家って、会社から近いよね、、、?無駄に広い3DK、、、、。」

「無駄には、余計だけどな。それがなに?」

そうして私は、ひょんなことから

幼なじみで同期の、慧と同棲することになるのだった。