そう言えば、
蓮見くんも大量のパンを買ったみたいなこと言ってたような………。
神崎くんもだし、今日はパンの日かなんかなのかな?
まあ、美味しいけども。
「ほんと王子王子って、よく飽きねぇなぁ」
ぽつり、神崎くんが呟いた。
―――――何故かその言葉に違和感を感じる。
なんでかはよくわからないけど…。
少し含みがあるように聞こえた。
「そりゃあんな人間離れしたイケメンなんだから当たり前でしょっ!」
だけどここで黙ってられないのが、熱狂的王子ファンの亜美。すかさず神崎くんへ文句を言う。
「そうかぁ?あいつ、全然王子様じゃねぇよ」
「はああ!?」
………やっぱり。
なんか違う。
なんというか…、神崎くんが、今まで蓮見くんに向けていた嫌悪感があまり感じないんだ。
気のせいかな?
それでも亜美は、王子ファンの名誉にかけてわーきゃーと、蓮見くんの王子話を熱く熱く語っていた。
それに、いつもは反論する神崎くん。でも今日は黙ったまま。
なんだか府に落ちなくて、神崎くんを見ると。
神崎くんもこっちを見ていたようで、バッチリ目があった。
「………?」
なんか、顔についてるかなぁ。
顔を触って確かめてみるけど、特に無さそうだ。
「王子様、かぁ…」
神崎くんは考えるように視線を宙に浮かしていたから、多分自分の独り言にも気付いていない。
ただなんか、王子様って………とても孤独な言葉に聞こえたんだ。
一人だけ、特別な存在………。
じゃあそこに、仲間は…?
「やっぱ、あいつ嫌いだわー」
そういう神崎くんが、蓮見くんを本気で嫌ってるようには、やっぱり思えなかった。