綾瀬先輩に手を引かれ、連れてこられたのはいつもの屋上。
そこには、綾瀬先輩の友人達がいつもみたぬ揃っていた。
ただでさえ蓮先輩と一緒で心臓がもたない上に、久しぶりのメンバーだがなぜか少し緊張してしまう。
「蓮から色々聞いたよ?おめでとう、咲良ちゃん。よかったね」
そう言って、いつものようにクールで綺麗な微笑みを浮かべたのは海里先輩だ。
完璧なアッシュグレーの王子様スマイルが、今の咲良には少しだけ恐ろしい。
「……一体どれに対してですかね?というか、何をどこまで聞いたんですかね?」
引きつった笑顔で尋ねる咲良に、海里先輩はクスッと小さく声を立てて笑った。
「んー全部かな?」
少しだけ意地悪そうに細められた瞳に、咲良は完全にノックアウトされる。
全部って、どこからどこまで!?
色々噛み合ってなさそうなんですけど?!
追い打ちをかけるように、今度は爽先輩と凌久先輩の双子コンビが、息ぴったりのタイミングで左右から顔を覗き込んできた。
「咲良ちん!」
「咲良っぴ!」
「あの倉庫から蓮が助け出したんだってー?マジヒーローじゃね?」
「蓮、かっけー」
「「あ!ところで咲良ちんのデート、俺たちも一緒に行ってもいい~?」」
「ところでの使い方が、もはやおかしいですよ!なんで付いてくるんですか!あ、ちが、じゃなくて、これは、その……っ」
慌てて否定しようとしたけれど、何を言っても墓穴を掘りそうな会話の流れに、胸が苦しくなるほど顔が熱くなる。
恥ずかしさでパニックになる咲良を守るように、蓮先輩がさりげなく仲裁に入った。
そして、眩しいほどの笑顔を周囲に向ける。
「ダメダメ!咲良ちゃんと俺の初めてのデートなんだから!お前らついてくんなよー?」
悪戯っぽく、だけど有無を言わせない独占欲を滲ませて、綾瀬先輩は言い放った。
『初めて』という言葉の甘い響きが耳の奥でリフレインして、くすぐったくて、もうどうしていいか分からない。
「……綾瀬先輩、もうやめてください」
「んー?なんで?」
恥ずかしさが限界突破した咲良は、小さな声で抗議しながら、ぷいっとふてくされて視線を逸らした。
そんな咲良を、綾瀬先輩が愛おしそうに見つめていることにも気づかずに。



