一階のロビーで茉那は咲良が心配で、ただ床の一点を見つめて立ち尽くしていた。
胸の奥をかきむしるような不安と焦燥感。
「咲良……お願い、無事でいて……!」
祈るように胸の前で手を握り締めていた、その時だった。
「茉那!」
聞き慣れた愛おしい声に弾かれたように顔を上げると、そこには、少し疲れた笑顔を浮かべる咲良の姿があった。
そして、その隣には綾瀬先輩が寄り添っている。
「咲良――っ!もう!心配したんだからぁ!!」
張り詰めていた糸がぷつりと切れ、茉那は人目も気にせず咲良に駆け寄った。
そのまま、折れそうなほど細いその身体をぎゅっと力いっぱいに抱き締める。
視界が涙で瞬く間ににじんでいく。
「それに……ごめんね!私、怖くて……一緒に行けなくて……っ!」
「ううん、そんなことないよ。ありがとう、茉那」
咲良は困ったように、でも、茉那を安心させるように優しく微笑んで私の背中をぽんぽんと叩いてくれた。
「茉那がすぐに綾瀬先輩に話して、助けを呼んでくれたんでしょ?だから私、助かったんだよ」
その言葉に救われて、茉那は涙を拭いながら、咲良の隣に立つ絶対的ヒーローへと視線を向けた。
「綾瀬先輩、本当にありがとうございました!」
満面の笑みでお礼を言うと、いつもはどこか遠い存在に思える綾瀬先輩が、ふっと柔らかく目元を緩めて微笑み返してくれた。
その破壊力抜群の笑顔に、少女漫画の主人公を見るようなときめきを覚えつつも――茉那は、ある「違和感」に気がついてしまった。
二人の距離が、やけに近い。
というか、視線を下に落とすと二人の手が自然に重なっている。
(……え? えええっ!?)
茉那の恋愛センサーが激しく警報を鳴らした。
「ところで……二人とも思いっきり手を繋いでましたけどー?もしかして……付き合ったの!?」
「っっ!?!?!?」
途端に、咲良の顔が爆発したかのように真っ赤に染まった。
わかりやすすぎるその反応に、茉那は心の中で快哉を叫ぶ。
『嘘っ! 見られてた!?』
心の声がそのまま顔に書いてある咲良は、あわあわと両手を振って全力で首を横に振った。
「そ、そんなんじゃないから!ぜんっぜん違うから!!」
「え~?そんなに全否定しなくてもいーじゃんー」
慌てふためく咲良の隣で、綾瀬先輩が楽しそうにニヤニヤと笑い始める。
その意地悪で、だけど甘やかすような視線は、どう見てもただの後輩に向けるものではない。
「綾瀬先輩も笑ってないでちゃんと否定してくださいよ!」
咲良は顔を真っ赤にしたまま、じろりと綾瀬先輩を睨みつけた。
けれど、先輩はそんな反抗すら可愛いとでも言うように、さらに口元を綻ばせる。
「じゃ、俺、これから咲良ちゃんと保健室行くから。また後でね」
「えっ!? 咲良、どこか怪我したの!?」
「保健室」という不穏なワードに、茉那の頭から一気にピンク色の妄想が吹き飛んだ。
心配になって咲良に詰め寄ろうとしたけれど、綾瀬先輩の行動の方が一瞬早かった。
「かすり傷だから!大丈夫、本当になんでもないから!」
咲良が振り返って叫ぶ。
けれど、その左手は、再び綾瀬先輩の大きな手にしっかりと包み込まれていた。
有無を言わせない強さで、だけど決して痛くはない優しさで、先輩は咲良を引いて歩き出す。
「あ、ちょっと!綾瀬先輩……っ?」
小さく抗議する咲良の声を、先輩は「ほら、行くよ」と優しくあしらって、そのまま二人で廊下の向こうへと消えていく。
残された茉那は、遠ざかる二人の後ろ姿を呆然と見送っていた。
……いや、正確には、二人の繋がれた手を。
「えー!また手、握ってるじゃん……!!」
じわじわと胸の奥から興奮が込み上げてきて、茉那は両手で顔を覆った。
「きゃー!! なにあれ、ごちそうさまです!さすが綾瀬先輩っ……!!」
誰もいないロビーで、茉那は一人、これから始まるであろう二人の甘い恋模様を想像して、激しく身悶えするのだった。
胸の奥をかきむしるような不安と焦燥感。
「咲良……お願い、無事でいて……!」
祈るように胸の前で手を握り締めていた、その時だった。
「茉那!」
聞き慣れた愛おしい声に弾かれたように顔を上げると、そこには、少し疲れた笑顔を浮かべる咲良の姿があった。
そして、その隣には綾瀬先輩が寄り添っている。
「咲良――っ!もう!心配したんだからぁ!!」
張り詰めていた糸がぷつりと切れ、茉那は人目も気にせず咲良に駆け寄った。
そのまま、折れそうなほど細いその身体をぎゅっと力いっぱいに抱き締める。
視界が涙で瞬く間ににじんでいく。
「それに……ごめんね!私、怖くて……一緒に行けなくて……っ!」
「ううん、そんなことないよ。ありがとう、茉那」
咲良は困ったように、でも、茉那を安心させるように優しく微笑んで私の背中をぽんぽんと叩いてくれた。
「茉那がすぐに綾瀬先輩に話して、助けを呼んでくれたんでしょ?だから私、助かったんだよ」
その言葉に救われて、茉那は涙を拭いながら、咲良の隣に立つ絶対的ヒーローへと視線を向けた。
「綾瀬先輩、本当にありがとうございました!」
満面の笑みでお礼を言うと、いつもはどこか遠い存在に思える綾瀬先輩が、ふっと柔らかく目元を緩めて微笑み返してくれた。
その破壊力抜群の笑顔に、少女漫画の主人公を見るようなときめきを覚えつつも――茉那は、ある「違和感」に気がついてしまった。
二人の距離が、やけに近い。
というか、視線を下に落とすと二人の手が自然に重なっている。
(……え? えええっ!?)
茉那の恋愛センサーが激しく警報を鳴らした。
「ところで……二人とも思いっきり手を繋いでましたけどー?もしかして……付き合ったの!?」
「っっ!?!?!?」
途端に、咲良の顔が爆発したかのように真っ赤に染まった。
わかりやすすぎるその反応に、茉那は心の中で快哉を叫ぶ。
『嘘っ! 見られてた!?』
心の声がそのまま顔に書いてある咲良は、あわあわと両手を振って全力で首を横に振った。
「そ、そんなんじゃないから!ぜんっぜん違うから!!」
「え~?そんなに全否定しなくてもいーじゃんー」
慌てふためく咲良の隣で、綾瀬先輩が楽しそうにニヤニヤと笑い始める。
その意地悪で、だけど甘やかすような視線は、どう見てもただの後輩に向けるものではない。
「綾瀬先輩も笑ってないでちゃんと否定してくださいよ!」
咲良は顔を真っ赤にしたまま、じろりと綾瀬先輩を睨みつけた。
けれど、先輩はそんな反抗すら可愛いとでも言うように、さらに口元を綻ばせる。
「じゃ、俺、これから咲良ちゃんと保健室行くから。また後でね」
「えっ!? 咲良、どこか怪我したの!?」
「保健室」という不穏なワードに、茉那の頭から一気にピンク色の妄想が吹き飛んだ。
心配になって咲良に詰め寄ろうとしたけれど、綾瀬先輩の行動の方が一瞬早かった。
「かすり傷だから!大丈夫、本当になんでもないから!」
咲良が振り返って叫ぶ。
けれど、その左手は、再び綾瀬先輩の大きな手にしっかりと包み込まれていた。
有無を言わせない強さで、だけど決して痛くはない優しさで、先輩は咲良を引いて歩き出す。
「あ、ちょっと!綾瀬先輩……っ?」
小さく抗議する咲良の声を、先輩は「ほら、行くよ」と優しくあしらって、そのまま二人で廊下の向こうへと消えていく。
残された茉那は、遠ざかる二人の後ろ姿を呆然と見送っていた。
……いや、正確には、二人の繋がれた手を。
「えー!また手、握ってるじゃん……!!」
じわじわと胸の奥から興奮が込み上げてきて、茉那は両手で顔を覆った。
「きゃー!! なにあれ、ごちそうさまです!さすが綾瀬先輩っ……!!」
誰もいないロビーで、茉那は一人、これから始まるであろう二人の甘い恋模様を想像して、激しく身悶えするのだった。



