【完】台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


周りなんて気にせずにきゃっきゃとはしゃぐ私たちを、ギャラリーはぽかんと見つめている。

そんな中のひとりに、面白くなさそうな顔をした小川さん達もいる。
「羨ましい……」と誰かが呟いたのを、キッと睨みつけていた。


「……」


――そんな彼女達に、爽真くんが無感情な視線を送る。


色なんてなくても、その涼やかな顔立ちに視線を向けられればときめくのには充分で。

「こっち見てる……っ!」と、小川さんたちが声にならない声を上擦らせた。


――爽真くんはそれ以上、なにもしない。言わない。
ただ数秒見つめて“ああアレか”とでも言いたげに、ほんのわずかに双眸を鋭くするだけ。

静かに刺すような冷ややかさに、興奮したはしゃぎ声が止んで急に空気が張り詰める。

「……」

そのままギャラリー全体に視線を送って制圧した後で、爽真くんは最後に私たちの方を見た。


「……俺もいるの忘れてない?デートじゃないんだけど」

淡々としてるのに圧のない声に、ふっと緩む緊張感。

「はぁ!?遠慮してください!!」と憤慨する陸くんの背に、「ふぁあっ」とまた興奮の声が上がる。

「無理」と短く切った爽真くんが歩き出すと、それに続いて噛み付く陸くんが追いかける。
ふと、陸くんだけが足を止めて振り返って、「ひより!はやく」と呼びかけてきた。


軽くなった足取りに反して胸はいっぱい。
「はいっ」と笑顔で返事をして、一生懸命その後ろ姿を追いかけた。

――角を曲がって人気がなくなってから、爽真くんが急に立ち止まる。

「じゃ。俺は帰るから」

淡白にそう言って、返事も待たずにさっさと歩き出す。

「は!?!?急にサプライズしろって言ったり俺もついて行くって言ったり、今日の爽真さんおかしいっすよ!?」

唯一事情を分かってない陸くんが、振り回されて肩を怒らせている。

「……いいじゃないですか、陸くん。
そのおかげで、今日もデートができましたっ」

ぴたりと隣にくっついて、嬉しさのまま微笑みかければたちまち陸くんの勢いが落ちる。

「……まぁ、そう?だな?」
「はいっそうですよっ」

瑠奈ちゃんにするよりは控えめに、ゆるりとその腕を抱いて。
ひとりぼっちの通学路を、今日はふたりで歩いて行った。