語気を強めた私に、紫苑が満足そうに息を吐く。
パッと離れて、態とらしく爽やかな笑顔に戻った。
「へぇ。そういうこと。
一意見として参考にするね」
「……なっ」
呼ばないんかい!
なんて咄嗟に口に出そうになって、慌てて口を閉じる。
綺麗に弧を描く紫苑の唇からふっと笑いが漏れて、それに反発しようとすると――
軽快な電子音と共に、注文した商品がロボットに乗せられてやってきた。
「はい、これ香月さんの分」
通路側に座る紫苑が手際よく料理を受け取って、テーブルに並べ出す。
やっぱり香月さん、と私が若干不服そうにしたのを横目に、紫苑はひっそりと含み笑う。
こっちは悟られるのも悔しいから平然を装って、また普通の日常会話に戻っていった。
ファミレスから出た後も、駅までの道はゆるゆる手繋ぎ。
「明日の予定は」とか、「次いつ会おう」とか、なんでもない話をしながらあっという間の道のりで。
改札を潜ると、帰る路線が違うからそこで今日のデートは終了。
人でごった返す地下通路の隅っこで、数分だけ立ち止まった。
「ねぇ」
「ん?」
不意に紫苑に呼びかけられて、そっちを向く。
瞬間、私の横顔に紫苑の持つキャップを翳されて――
その影で、ちゅ、と唇が重なった。
「はっ!?……人目……!」
「見てないでしょ誰も」
一瞬で離れていく紫苑の顔は、子どもと大人が混ざる悪魔の笑み。
真っ赤になって焦ってる私の顔を満足そうに見下ろして、何食わぬ顔でキャップを被り直した。
「じゃ、またね?――瑠奈」
意地悪なのに、とびっきりの甘い声。
余裕綽々でひらりと踵を返して、呆然とする私を置いてさっさと自分のホームに歩いて行った。
(な、な、……な――!?!?)
照れと羞恥で肩が怒る。
心臓は飛び出そうなくらいバクバクで、目はこれ以上なく泳いでいる。
――ホームへ上がる階段を、紫苑はゆっくりと上がっていく。
(可愛かったな、香月さん)
キャップの影に隠すその顔は、蕩けるくらい甘く微笑んでいた。
End.
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IF書きたい!と思いつつ、本編の紫苑瑠奈が綺麗に関係を終えたので、どうしよーーと思ってたらリクエスト頂いたので書いちゃいました♡
紫瑠が成立する場合は、2人で画策してなんとかアオバケ公式カップルとして成立するんだろなと。
これっきりなので好きなだけ甘ったるくしてやりました。
紫苑は手繋ぎはむしろ鬱陶しいと思ってる派で、香月さんとの手繋ぎだから駆け引き込みで好きって妄想です。
多分、小悪魔絡みも瑠奈相手にしかしません。他の子には飽きるまではいい彼氏やってそう。
パラレルワールドだと思って、楽しんでもらえていたら嬉しいです♡



