【完】台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


私はパスタセット、紫苑はロコモコセットをそれぞれ注文して到着を待つ。

広いソファ席なのに妙に近い微妙な距離感。
動くのも変な気がして、ずっとのそのままだった。


「そういえば紫苑、なんでずっと香月さん?
付き合ってるわけだし、他に呼び方あるくない?」


会話の合間合間で呼ばれる“香月さん”に引っかかって、首を捻る。
紫苑はきょとんとした顔をして、んーと腕を組んだ。


「だめ?この呼び方、なんか特別感あって好きなんだけど」

「だめではないけど……特別感ってより、どっちかというと距離ない?」

「かな?……じゃあ、なんて呼んで欲しいの?」


きょとん顔が、にぃっと意地悪な笑みに変わる。


あ、しまった。
と思った時には遅くて、蜂蜜色の瞳が妖しく細まる。


「それは、……ほら、あれよ」
「どれ?わかんないなー」

「……呼び捨て?とか?」
「呼び捨て?香月ってこと?」


恥ずかしくなって顎を引いて上体を横にずらした分だけ、余裕そうに紫苑が距離を詰めてくる。
キッと睨めば、余裕顔。


こいつ、面白がってる!
それがわかるから憎らしい。


「……瑠奈って呼べばってこと!」