「昨日泣いたの?香月さん」
低く、耳の奥を震わせる声。
そんな声がいきなり核心をついてくるから、思わず瞬きをしてしまう。
それでも何とか笑顔は維持して、抵抗の意思を示すように腕に力を入れた。
「瑠奈が女の子との喧嘩で、泣くわけないでしょー?」
想定通りの追求。
隙さえ見せなければ、のらりくらりと躱していけるはず。
「原因は喧嘩なんて言ってないけど。
泣いたか泣いてないか、イエスかノーだよ」
「じゃあ、ノー」
「原因は爽真?」
「原因も何も、泣いてないんだから何もないよ〜」
「……知ってる?人間ってちょっとでも泣くと、翌日くらいまで涙袋が萎むの」
「そんなカマかけ、ひっかからないもーん」
紫苑の手が、抵抗を許さないように私の手をしっかりと棚に縫い付ける。
勝利を確信した顔で間近に私を見下ろした。
「引っかかるカマかけだったら、引っかかってたってこと?」
「なっ……」
やられた!!
ハイテンポな会話に乗せられて、答えを慎重に選べなかった。



