台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


「結構奥まったとこにあったと思うんだよねー……」

蒸し暑い廊下を、紫苑の後について歩く。

ゲームなんて口実。
後の展開なんて目に見えている。

それでもついていくのは、さっさとカタをつけたいから。

気持ちを認めてから、心はかなり安定した気がするけれど。


相手は紫苑。
暇つぶしのおもちゃにされないように、腹を括ってかからないと。


物置部屋のドアを開けた紫苑が、私に先に中に入るよう促す。

毅然としてしっかりと中に入り込めば、案の定、紫苑の入室と同時にドアが閉まり、内鍵をかけられた。


(さあこい追求。どっからでも受けて立つ)


心理戦に備えて身構えてたのに――
一手目から手首を取られて、近くの棚に追いやられた。


トン、と背中をぶつけた弱い衝撃で、ふわりと広がる埃の匂い。
そして、それに混ざる、遅効性の甘い紫苑の香り。

狭い部屋に反響する、冷房の動作音。

余裕ぶって薄く笑っているようにも見える瞳が、蜂蜜色の前髪の間からチラチラと覗いていた。