「いいよぉ、どれどれっ?」
トコトコと二次元的な効果音が付きそうな走り方でダイニングテーブルに向かって、紫苑の真向かいに座る。
可愛く頬杖をついて愛想よくひよりのノートを覗き込む私を見て、ひよりは気まずそうに喋るのをやめた。
――ひよりは昨日、私が泣いたのを隣で見ていた。
多分、その原因がその時見ていた映像だってことも、何となく察しているだろう。
そこに写っていたのは私と爽真。
でも、私たちの関係は、表には一切出したことがない。
だから、“なぜ泣いたのか”までは見当がついていないはず。
「ひよりちゃん?この問題でいいの〜?」
答えが途中で途切れている数式を指差して、目も合わせずに問いかける。
正面からずっと注がれ続けている、さりげない視線。
この場において、警戒すべきはひよりじゃない。
どんな些細な違和感も拾ってくる、紫苑だ。
「あ。はい……ええっと……」
「うんうん」と小刻みに相槌を打って、いつも通りに演技をする。
ひよりの手つきが急にぎこちなくなったことに目をつけた紫苑が、くるんとシャーペンを回した。
「瑠奈ちゃんとひよりちゃん、喧嘩したりした?」



