だから、これは役としての雑談。
エンジンかかるのが遅すぎる、爽真の下手くそな演技。
「瑠奈はもちろん、紫苑くんを誘うよぉ?
……爽真くんはぁ、美玲ちゃん。でしょっ?」
「……そ」
聞いたくせに、そっけない返事。
爽真がカメラに背を向けていてよかった。
もう一度全てを閉じた無感情さは、エンタメにしては重過ぎるように見えるから。
変に空気が重くなった気がして、商品棚に向き直る。
6個のカットケーキが丸くくっついているおもちゃが目に入って、突然全てが繋がった。
「あっ!ケーキ!ホールケーキだよ、爽真くんっ」
私が急に大きな声を出したせいで、深く沈みそうな爽真が引き戻されてびくっと揺れる。
ひらめきに興奮している私は、お構いなしで得意げに解説を並べた。
「“全部を意味する”は、ホールケーキのwhole。
基本みんなで切り分けて食べるから、全部をもらえる人は少ない。
中心から同じ角度で切り分ければ、余計な喧嘩も起こらない。
どう、これっ。完璧な推理でしょっ!?」
無邪気に爽真を見つめて目を輝かせる。
この時の私は、ほんのちょっとだけ演技に素が混じっていたかもしれない。
「……だな。それっぽい……」
面食らったままの爽真が、調子を狂わせたままなんとなく頷く。
「そうとわかれば、急ごっ!もう後5分しかないよ」
完全にテンションが上がっていた私は、いつものノリで爽真の手を取っていて。
勢いよく走り出した私に、振り解くタイミングを失った爽真は、スカートを揺らす私の後ろ姿を複雑そうに見つめていた。



