スプーンを受け取って、透明なゼリーを掬う。
一口食べれば冷たい甘さが口に広がって、喉を通って空っぽのお腹に落ちていった。
「おいし?」
「……ん?うん……」
食べているところを凝視しながら聞いてくるから、ドキリとして思わず普通に頷いてしまう。
「ならよかった」
紫苑の顔がくしゃりと柔らかく緩んで、その声がふわりと甘くなった。
「……さっき!スタッフさんと何話してたのー?」
察知した空気の甘さに気まずくなって、慌てて悪女な顔を作り直す。
それを受けた紫苑もすぐに王子様の顔に戻って、視線を前に向けた。
「ああ、あれ。ちょっと巻さんにね。
別に大したことじゃないよ。撮影スケジュールのこととか、そんな程度」
そんなことのために、巻さんが、わざわざ?
美玲や爽真まで順番に呼び出しているのに?
ここでようやく、私の中に再び不穏な予感が落ちる。
それを察したかのように、紫苑がさりげなく距離を詰めて声を落とした。
「というか、ここじゃ言えないかな」
“シナリオに関わることだから”
紫苑の言葉には、そんなセリフが続く気がする。
半分だけになったゼリーのカップを持つ手に、無意識に力が入った。



