「爽真くん、おかわりいる?」
「……いや、いい」
賑やかな声の壁を隔てた先から、2人だけの会話が聞こえてくる。
「どうだった?朝ごはん……
爽真くんほど上手じゃないけど」
「普通に美味かったと思うけど」
「ふふ、よかった」
そう言って、美玲は嬉しそうにはにかんで笑う。
(なんか……なんか、近すぎじゃない?)
隣同士だから、とかじゃなくて、会話の距離が。
昨日まではなかった、美玲と爽真から感じる甘酸っぱい空気に心が澱む。
“爽真”の一方通行の恋。
そんな構図に見えなくて、むしろ、ちゃんと矢印が向き合っているかのような――……
「……っ、」
突然、きゅうっと胸が締め付けられる。
咄嗟に箸を机面に置いた音が響いて、みんなの会話が不自然に途切れた。
「……瑠奈ちゃん?どうしたんですか?」
斜め向かいに座るひよりが、きょとんとした顔で問いかける。
爽真以外のみんなの目も、不思議そうにこっちを向いた。
「……。なんでもなぁーい。
瑠奈、今日食欲ないからもうおしまいにするね♡」
「はぁ!?ほとんど食べてないじゃん!」
「え、具合悪い?」
「そういうのじゃないのー」
彩加と大和の言葉をテキトーにあしらって、残した食事をキッチンに運ぶ。
後で食べるかどうかわからなかったけど、とりあえずラップをして冷蔵庫に詰め込んで、さっさとソファに逃げ込んだ。



