「遅ーいっ!撮影とっくに終わってるよねぇ?
みんながざわつき出したから、様子見に来ちゃったよ」
唇を尖らせてむくれ顔。
目の前に急に現れた争いの元凶の脱力感に、2人の顔が無になった。
「はー……馬鹿馬鹿し。
よく考えたら口論で爽真に勝っても、あんまり意味ないんだった」
ポンと軽やかに立ち上がった紫苑が、さっさとドア口に向かう。
その歩調は見た目より速くて、あっという間に瑠奈の目の前に到達した。
「俺って、瑠奈ちゃんのおかげで変わっていってるんだって。だからありがとー、瑠奈ちゃん」
ふっと柔らかく微笑んで、やんわりとお姫様にするみたいに瑠奈の片手を取る。
瑠奈が不思議そうに首を傾げると、今度は別の手が反対側の手を握った。
「……瑠奈のこと、1番よくわかってるのは俺だろ?
こんな軽い奴に惑わされるな」
「……?、??」
ぱちくり。
よくわからない状況に、瑠奈はとりあえずの作り笑顔を保ちながら瞬きを繰り返す。
呆然として両手を取られている状況を、結果的に受け入れてしまいながら、その頭にはひたすらハテナが浮かんでいる。



